「それはおかしいですよ」
そう言われて、春奈は愕然とした。落胆、諦め、そして少しの悲しさ。
(やっぱり)
しかしそれはもう何度と繰り返した事になっていた。私はとても嫌な奴だな、と春奈はまた思ったが、黙っていた。それを口に出したことはなかった。
「私は私なりに答えを出したつもりだったんですけれど…」
「それはあなたが勝手に出した答えだったってことです」
「意地悪ですねえ」
「なんとでもどうぞ。私はあなたなんですから」
それに、ここは夢の中なんですよ、と音無は言った。

「あなたのその意地悪な性格、なんとかなりませんかねえ」
「無理ですよ、私の性格が改善されるのはあなたが答えを言った時――つまりは消える時です」
私はあなた、と目の前の自分は言った。呟いたようにも、春奈に呼び掛けたようにもとれる口調だった。
「…ここは随分と寒いんですね」
「…あなたの夢の中ですよ。これは、あなたの心の今の温度です」
静寂に溶ける、音無の言葉。今夜はいつになく饒舌だ。
「あなたは×××に嫉妬している。それが、あなたの今なんですよ。」
「私は…」
「××が好きだった私。×××にそれを盗られた私。…元々私のものではなかったですけれど」

「私が嫉妬に呑まれていると言うなら、この寒さ、静けさは何なんですか」
納得いかなかった。一見柔らかい言い方だがこの女は、春奈が嫉妬に狂っていると言いたいのだ。納得いかない。
「あなたって、嫉妬の炎とか、そういうの、嫌いでしょう。…そういうことです。見た目普段と変わりませんが、心の中は嫉妬だらけ…例えるなら青い炎です」
目を伏せて音無は言った。なぜだかそれを見て少し悲しくなったのは、彼女が自分と同じ顔だからなのか。
「嫉妬の炎なんて」
「あなたは嫉妬する自分を醜いと思っている、」
「私は」
「それを自覚することさえ、」


「放っておいたら、いずれあなたは××を殺しますよ」
春奈は、再び愕然とした。



:夢想現実





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