なにかがぴたりとはまっただろう、重い音で塔子は気が付いた。読み耽っていた本から顔を上げ、なぜか嫌な予感しかしないせいで半笑いになりながら(中には他に誰もいないはずの)図書館の入口へと駆け寄った。
ドアの取っ手に手をかける。案の定というか――開かなかった。

(閉まって、る!)

力任せにドアを揺らしても開くわけなど無かった。誰か、と何度か叫んでみたが、無情にも塔子の呼びかけに答えてくれる人間はいない。金属を打ち付け合う音が響いた。


「誰だよ、ふざけんな…」
「おめでたい頭だね」
「え」

聞こえるはずのない声が聞こえ、塔子は驚いた顔で振り向いた。その口調に僅かに冷や汗を感じながら。
ばちん、と電気が消えた。

「君が財前塔子」
「…そうだけど」
ただでさえ暗くてよく見えない上に、目の前の少年(に見える)は大分深く帽子を被っていた。一見ファンシーな猫耳がついた帽子だが、彼自身の醸し出す雰囲気のせいなのかどうもそうは見えなかった。

「私は、あんたを知らないんだけど」

名乗れ、――そう言えば、彼は顔をしかめた塔子とは対照的に、ただ笑った。




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