だってオレ、
「はぁ〜、練習今日も疲れましたね!」
とても疲れているとは思えない笑顔で、前を歩いている虎丸がそう言った。
「ああ」
小学生というのは元気だなあ。
後ろを歩きながらそう思う。
「宇都宮くーん!!」
その時、前から虎丸と同じ小学生ぐらいの女の子が走ってきた。
「あ」
虎丸もそれに気付き女の子に向かって走っていく。
結構走っていったので何の話をしているのかは聞こえなかったが、とても親しそうなのは見てとれる。
楽しそうに話すふたりを見て、ふたりだけにしておいたほうがいいかなと思い隣を通り過ぎようとする。
その時、俺の目の前で女の子が虎丸の服を引っ張り彼の頬にキスをした。
いけないものを見てしまった感じがしてとっさに目を逸らす。
最近の小学生は進んでいるな…
そう思うのと同時に、もやもやしたものが胸のあたりに残った。
後ろを振り返らずに足を速める。
何だか寂しいような気がした。
長いのか短いのか分からない時間が過ぎた。
何も考えないようにして前を見ながらひたすら歩いた。
「…ッ、豪炎寺さん!」
どん、と肩を叩かれて我に返った。
「…虎丸」
振り返るとさっきと同じ明るい笑顔。
「…もう、何で先に行っちゃったんですかぁ?」
お前こそさっきの女の子はいいのかよ。
言いかけて咄嗟に我に返る。
え?今俺何て言いかけた……?
そう考えている時に、不意に頬に柔らかいものが触れた。
「…は?」
びっくりして横を見ると、くすくすと虎丸が笑っている。
少ししてやっと、自分が虎丸に何をされたのか理解をした。
「!?!?」
あたふたしていると、虎丸は腹を抱えて笑い出した。
「本っ当、豪炎寺さんはなに考えてるか分かりやすいですよねー」
そう言うと、虎丸はぐっと背伸びをして耳元に唇を近づける。
「大丈夫ですよ豪炎寺さん。だってオレ、」
虎丸が去って、豪炎寺はその場にしゃがみ込んだ。
「だってオレ、豪炎寺さんが好きですから」
しばらくは立ち上がれそうにないだろう。
ーーーーー
虎丸は小悪魔。
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