過去に縋る私は滑稽でしょう


暗めのお話です。
天京で、天馬くんがどこかに行っちゃった、という設定。


ーーーーー





窓から光が差し込んだ。



あぁ、今は朝なのか。
ベッドの上でそれを見つめる。

また今日という日が巡ってきてしまった。今日なんて、明日なんて来なくてもいいのに。
お前がいないなら時間がどれだけ過ぎたって関係ないのに。



お前がオレの前から去ってどれぐらいの時が流れただろうか。重くてどろどろとした時間だけが過ぎていった。

来る日も来る日も、オレは部屋から出ずにひとりで閉じこもった。



立ち上がり、机の上に置いてあるチームで撮った集合写真を手に取った。
松風がオレを引っ張って、中央に連れて来られたことを思い出す。俺は端っこが良かったのに。

机の下に転がっているサッカーボールを広い上げた。
お前は初めてオレの部屋に入った時に、真っ先にこのボールを拾い上げた。オレとお前が話す時はいつも、このボールはお前の膝の上にあったよな。



ふと気づくと、頬が涙で濡れていた。

こうやってお前との思い出を見つけては泣いての繰り返しだ。

この部屋には、お前との思い出がありすぎる。

あの時の、オレとお前の。



オレはいつからこんなに弱くなったのだろう。
人が離れていくなんて、いなくなるなんて、そんなもの慣れていたじゃないか。むしろそれが当然だったはずなのに。

お前ひとりがいなくなるだけでこんなになるなんて、オレはどうかしてしまったに違いない。



それでも。

お前の存在は、今のオレにとって全てだったんだ。
本当に大切だと思えたんだ。


今のオレを見たらお前はどんな顔をするだろうか。

どうしたの、とオレを抱きしめたあのときのお前がフラッシュバックした。



「…てん、ま」


お願い。

帰ってきて。





ーーーーー
お題サイト 雲の空耳と独り言+α様より

- 6 -


[*前] | [次#]
ページ:


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -