ふわりと


ふわりと、アイツの香りがした。







グラウンドを駆け回る鬼道が目に入った。
今日の練習は紅白戦、イナズマジャパンのメンバーを2つに分けての練習試合だ。

オレと鬼道は司令塔だから、必然的に別チームでの試合となる。

今は後半戦、スコアは0対1。オレのチームが負けている。

勝つためには得点が必要だ。

どうにかして点をもぎ取る為に、オレはフィールドを駆けながら必死に作戦を考えていた。





「クッソ…」

思いっきりベンチを叩いた。

試合は結局負け。

あの後も均衡した試合が続き、そのまま負けてしまった。

やらないのならそれはそれでいい。

だが試合に出る以上、何をしてでも勝ちたかった。


がちゃり。

扉を開ける音がした。

「…お疲れ」

扉の方を見ると、肩にタオルを掛けた鬼道が小さく手を挙げてこちらを見ていた。

「…何?」

試合の疲れと、負けた自分への怒りで怒ったような口調になってしまう。

「いや、こんな時間まで誰が残っているのか気になってな」

困ったように眉間に皺を寄せて鬼道は話した。

「オレで悪かったですね〜」

口を尖らせてわざとらしく言う。

鬼道はくすりと笑うと、オレの前のベンチに座った。

「一緒に、座らないか」

トントン、と鬼道は自分の座っているベンチを叩いて言った。

鬼道を見ると、ゴーグルの奥から心なしかいつもより優しい目をした彼と目が合った。

断る理由が無いので、仕方なく彼の隣に座る。




「今日の試合…動きが悪かったな」

少しして、鬼道が口を開いた。

くそ。試合の事は言うなよ、苛々する。

「へいへい」

何だかヤケクソになって答えた。

「俺が思うに、あそこではもっと相手の動きを見て、」

「はいはいちょっと黙って」

とん、と鬼道の肩に頭をのせた。

このままにしておくとお説教紛いの鬼道の説明が始まる。

そう思い、鬼道の言葉を遮るようにした。

別に鬼道が言うことは間違いでは無いのだが、試合が終わったばかりの今聞くのは少し勘弁願う。

それと、何だか無性に甘えたくなったからだとは死んでも言わない。




オレのそんな行動が予想出来なかったからなのか、オレが頭をのせると鬼道はびくりと肩を震わせた。

普段より近くに居るから、鬼道の香りがよくわかる。

安心して、落ちつく。そんな香りがする。

鬼道の香りを思いっきり吸い込んだ。

「ふ、不動…?」

おどおどと、何も喋らなくなったオレに鬼道が声をかけてくる。

そんな反応するなよ。

「…少し黙って」

いつもみたいな調子でいてくれないと、こっちが調子狂う。

心の中でそう呟いて、俺は目を閉じた。






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大分遅れたけどW司令塔の日記念に。
付き合ってるけど付き合ってない、付き合ってないけど付き合ってるような鬼道くんと不動くんが私は大好きです。

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