人魚姫


海に身を投げた。



躰が軽くなったような、

重くなったような、

不思議な感覚。


上を見上げると、

太陽の光がとてもレイで、

吐いた息が宝石のように上に上ってゆく。


コポコポという水の音が、

まるで子守歌のように私の眼を閉じさせた。


時が止まった。


真っ暗な中に、

ひとり、

またひとり、

私の周りの人達が現れては消えてゆく。


んなが口々に何かを言っている。


期待に満ち溢れた笑顔。

『頑張ってね』

勝利への固執。

『我々には勝利しかない』


急にみんないなくなった。

辺りを見回と、

私の方に向かって歩いてくる

見覚えのある顔。


『どうしたの?』

嗚呼、愛しい君の声。


最後に思い残すことがあるとすれば、

それは君に伝えることがでなかった

この想い。


幻でもいい。

君に届かなくてもいい。

声が出なくて、

でも、それでも口を動かした。

『     』



靴が脱げた。

なんだか足の錘が取れた気がした。


ネクタイが解けた。

私を縛っていた物が取れた気がした。


髪留めが緩くなった。

何かから解放された気がした。


躰を包み込む水が、

ゆっくり、

ゆっくりと体温を奪い取ってゆく。



段々と君が薄れていって、

最後に見たのは、

君の、

君の−−−−−






_

- 16 -


[*前] | [次#]
ページ:


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -