あたしの隊にはちょっと変わった子がいる。その子はパパと一騎打ちして負けたにも関わらずその後もパパに挑んでは返り討ちにあってもヘコたれない子だ。
最初は触れるもの全部傷つけるような雰囲気だったけど、構いたがりのサッチと世話焼きのマルコのおかげで何とか落ち着き、今はあたしの一存(我儘ともいう)でこの2番隊で日々生活しているという訳だ。
あたしたちへの警戒心が解ければ社交的で人懐こい青年なのだ…おっと、噂をすれば。

「おはようございます、***副隊長!」
「おはようエースくん。今日も1日頑張ろうね」
「はい!」

変わった子…エースくんは今日も満開の笑顔が眩しい。その笑顔にキュンときたナースたちが彼にアタックを試みても彼の反応は「?」というばかりでどうも彼は鈍いらしいというのが、最近隊長たちの間でのちょっとした噂。
戦闘能力も高く、元船長というだけあって頭も良ければ顔も良いのにもったいないなぁと隊長たちが苦笑して言っていたのを思い出す。そんな一面があるからこそ、彼は人気なんじゃないかなぁとあたしは思うけれど。

「…あ、」
「?」
「ちょっとすみません、」

そう言って突然エースくんが1歩踏み出してきたことで驚いたあたしの体はガチンと固まる。エースくんの顔が傾けられて、唇に鼻が近づいたのが分かった。

「え…エースくん…?」
「副隊長今日リップ変えたんですね!スゲーいい匂い」
「え!?」
「あれ、違いました?」
「う、ううん…合ってるけど…」

な、なんということだ。乾燥防止のためのリップを今日は変えてみたけれど、それに気付いたのはマルコだけだ。

『普段から意識してなきゃ分からねェよい』
『あ、そうなんだ……って、じゃあマルコも普段から意識、』
『してたっつうよりさせられたっつう方が正しいよい。お前俺の部屋に勝手に自分のリップ置いてあんの忘れたのかい』
『あ』
『あのシリーズのは俺も使ってるからない、何回自分のと間違えそうになったか。そんなことしてりゃ自然と匂いなんざ覚えちまう』

いや、気付けるのはマルコだけという方が正しいのかもしれない、あとパパも。

「いつものリップも好きだけど、俺はそっちの方が甘い匂いで好きだなぁ。…じゃ!」
「あ、ちょっ…」

踵を返して走り去るエースくんの背中ではパパのマークがあたしに笑いかけているようで何だか気恥ずかしくなってしまった。
あるいはエースくんは新入りだけどなかなかあなどれないぞ、と教えてくれているのかもしれない。









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