エースが親父に呼ばれた。
暫くして戻ってきたエースの顔はいつもの清々しい顔じゃなくて、何か思考を巡らして、でも何かを決意した顔だった。
エースはあたしの視線を感じたのか、あたしを見て微笑った。
そしてどかりとあたしの隣に座った。



「…ティーチを追いかけることになった」



そう言ったエースはあたしを捉えず、真っ直ぐ前を向いていた。
ふ、と微笑んであたしの頭に手を置いて、すぐどこかに消えてしまった。
あたしはただ黙ることしかできなかった。
エースに、何も言うな、と雰囲気で伝えられた気がした。





「気をつけてけよ」
「無理すんなよ」


エースはそんな言葉にああ、といつも通り笑って返事をした。
大勢の仲間たちから励ましをもらっている彼を、少し遠くから眺めた。
何だか、本当の本当に遠くに行ってしまう気がした。
エースはまた、あたしを見つけて近寄ってくる。
それにあわせてみんなの視線もエースを追って、あたしとエースを捉えた。
エースがあたしの目の前に立って、さっきと同じように真っ直ぐあたしを見つめた。




「行ってくる」
「うん、…いってらっしゃい」



そう告げた途端、どちらからともなく抱き合う。
ピタリ、と隙間を埋めるように抱きしめられて、あたしもキツく抱きしめ返す。
目を瞑って深呼吸をすればエースの匂いが肺いっぱいに満たされた。
瞬間、ホロリと一粒の涙が頬を伝った。







背中に落ちる





ゆっくりと離れて、エースは何だかいろんな感情が混ざった顔をしていた。
あたしのおでこにキスをして、彼はあたしに背を向け歩き出した。
彼の背中越しに見える景色は涙で歪んで見えた。






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