屋上と言ったらサボりには最適過ぎる場所だと、俺は思う。
それは校長をはじめとした学校中の教師が知っている為、俺が二年にあがった頃には屋上に鍵をつけた。

ちなみに、俺はまだ屋上でサボった事はない。
折角サボろうと思っても先客が居るのだ。(高杉とか高杉と高杉とか…)別に誰か居ても良いが、やっぱり広ーい屋上は独り占めしたいじゃないか!



「タララッラタラ〜。沖田くんお手製屋上の鍵ー」



と、いうわけで俺が制服のズボンのポケットから取り出したのは沖田に造らせた鍵。
勿論、言わずもがなピッキング用のもの。
犯罪とか言うんじゃない、別に空き巣するんじゃねぇからセーフだ、セーフ。

俺はその鍵を使って屋上の扉を解きにかかる。
高杉はまだ来てないから屋上には出没していない筈。あいつは基本的に昼時に来てすぐ屋上に向かうからなァー。



「お、開いた」



沖田製の鍵は素晴らしい、普通の鍵と何ら変わりない。ある意味怖ェ……。

古さ特有の軋む音を響かせながらドアをゆっくり開ける。念願の屋上でのサボり、俺一人でじっくり堪能してやる。


よくわからない決心を胸に秘めながら扉の向こうを見ると見慣れたセーラー服が視界に飛び込む。



「んなっ……!?」



女生徒はフェンスの向こう側に立っていて、見るからに「私は今から自殺します」的な光景だった。流石の俺でも目の前で自殺されちゃあ後味が悪い。

いくら屋上はサボりと自殺の定番、お約束だからってまさか目の前でそのお約束を見れるとは、びっくりだ。


って、いやいや。そんなこと考えている暇じゃない。

取り敢えず引き止める為に俺は走って女生徒に近付いた。



「おい!お前何してんだ!!」

「?」



俺の言葉に女生徒はキョトンとした表情でこちらを見た。

そしてゆっくり口を開く。



「何…って、他の惑星(ほし)とお話してたの」

「………」



どうやら彼女は電波さんだった。

その返答に困惑していたら、彼女は柔らかく微笑みながらフェンスを越えて此方に向かってくる。そして俺の数歩手前で止まり、言葉を繋いだ。



「ふふ、みんながね、『***のほしはたのしそうだ』って」

「はぁ…」

「きみのこと、話してたよ。『とっても素敵な人だ』だって」



ふんわり日だまりのような笑顔でそう言った電波さんは、素直に可愛いと思った。

そう感じたら、何だか急に居た堪れなくなって目を逸らしながら相槌を打つ。



「綺麗な髪だね、羨ましい」

「!!」



そう褒められ、自分に向けられた笑顔に心拍数が一瞬にして上がった。

そうなると彼女を直視するのが尚更困難になる。でも彼女はマイペースなままで俺の頭に手を伸ばし、優しく触れる。
それだけで激しく心臓が脈を打つ。



「ふわふわ」

「………」

「私、***。あなたは?」



頭を撫でたまま電波さん改め***が名前を聞いてきた。

俺は上手く言葉を紡げなくて、結局ボソッと呟くように名前を教える。




屋上のお約束
(サボりと自殺現場と、)





「ぎ、銀時」
「ぎんときくん、だね?」
「(やべ、可愛い…)」


電波な女の子にをする?




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