「うぅ…」
「どうしたんだよ」
「……なんにも無い、よ」

隣に座るキッドくんに話し掛けられただけでどきどき言う心臓が煩くて、本当に参ってしまう。下手すると窒息しそうなくらいに呼吸が上手くできなくなって、小さく震える手で赤くなった頬を隠した。(だってキッドくんかっこいいんだもん!)キッドくんが教科書を忘れたとかなんとかで机をくっつけているせいで、すごく距離が近くて余計に緊張してしまう。幸せ死にっていう死に方があるならすでに死んでる勢い。

「あ、」

キッドくんが小さく呟いたのが聞こえて、視線を向けると「しまった」とでも言うかのような表情のキッドくんが目に入ったから、緊張しながらもどうしたのとたずねたら彼は宿題をし忘れたと言って頭を掻いた。キッドくんが当てられるのはたぶん次だ。(あんなややこしい計算じゃ今からやっても間に合わない、よね)

「悪ィ***、お前の貸してくれよ」
「え、あ、うん!」
「……字、綺麗だな」

あわてて計算式を書いたノートを渡すと、キッドくんに感心したように呟かれてちょっと舞い上がってしまう。(ノート綺麗にとっててよかった…!)なんだかとっても幸せな気分で、黒板のほうに向き直って、先生の質問に答えるキッドくんの声を聞いていたんだけ、ど、ノートに書いた落書きのことを思い出してわたしは思わず冷や汗をかいた。だって本当にやばい。いくら小さく書いたといっても「キッドくんだいすき」なんて落書き、どうにも誤魔化しようがない。(き、きづきませんように…!)

「…***、」

無事に自分の番を終えたらしいキッドくんに不意に名前を呼ばれて、いっそう鼓動がはやまる。どうしようどうしよう、と思いながらキッドくんを見ると、「助かった」と案外普通にノートを返されてわたしは面食らった。(いやでもラッキーだ、気付いてないならそれで!)ほっとしてノートを受け取ったわたしは、落書きに何気なく目をやって、そして固まってしまった。「キッドくんだいすき」とピンクのペンで書いてあるすぐそばに、キッドくんの字で乱暴に「おれも好きだ」と書かれてあったからだ。あまりの衝撃に目をしろくろさせてキッドくんを見ると、視線は逸らされているけどその顔はほんのりと赤くて。本当に死ねるかもしれないと思うくらい幸せで、でももうどうしたらいいかわからないくらいに混乱してて、まっかになった顔をただ隠すことしかわたしにはできなかった。






(あの、えっと、キッドくん…!)
(……ノートに書いてないで口で言えバーカ!)
(えっ!ご、ごめん…?)
(………………好きだ)
(!、わ、わたしも!)




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