「ぞーろー」



敵襲があった夕方とは打って変わった騒がしさの夜。
一人、甲板で酒を飲んでいると騒がしい輪から抜けてきた***がふらふらとこちらへ近づいてきた。




「酒飲んだのか」
「んーふふー、きょーはぶれーこーだぞおってルフィ言ったの」
「この船に無礼講もクソもねェだろ」




一杯で酔っちまうほど弱ェくせに飲むなよ。
そう言えば「よわくないもーん!もっと飲めるよ!」と俺のジョッキを掴みやがったから頭を小突いてやった。



「ちぇー、ゾロけちんぼだあ。けちな男はねーもてないぞー!」
「うるせェ酔っ払い」
「むむむ…」



何やらぶつぶつ呟いてなぜか隣に腰を下ろした***に目をやれば、そいつも酔ったせいで紅くなった頬にとろんとした目でこちらを向いてきて心臓が少しざわついた。(…なんだ、これ)


変な感覚を振り払おうと酒を呷る。それでもなぜか、意識はやけに色っぽい隣に集中しちまう。
…俺らしくねェな。




空になったジョッキに酒を注ごうとしたら***がいきなり立ち上がった。




「ねーゾロ!空きれーだよー星いっぱいでてんね!」
「…あァ」
「明日はきっと晴れるねえ…、ぞーろ!」
「っ、んだよ」



空を見上げていたと思ったら今度は思いっきり背中に飛びついて来やがる。
こいつは常に何を考えてんのか掴めねェやつだが、今日は酔っ払ってる分倍増しだ。




「んふ、あたしねーゾロの背中だあいすき」
「はァ?」
「あたしのこと守ってくれる、おっきー背中」
「……」
「でもねー、いっつも守ってもらうばっかじゃかっこわる、でしょ?せめて、…みんなのちからになりた…の。だか、ら…あたし……も、と…つよく………、」




すぅ、と寝息が聞こえて首にまわっていた腕が腰に移動する。




「…バーカ」



こんな細ェ腕で余計なこと考えてんじゃねェよ。お前ひとりくらい、全然重荷なんかじゃねェんだっつの。






何とも言い表せねェ感情に思わず頬が緩みそうになる。


めずらしく酔っちまった、なんて考える今日の俺は本当に俺らしくねェようだ。








背中に伝わる甘い吐息

(守りてェ、と思った)




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