ビリ、と鬼道は恐る恐る袋を破った。袋の中にある私たちには慣れ親しんだ物を訝しげに見つめる鬼道はやはりお坊っちゃまなんだなと私は思った。
パサパサするそれを鬼道はゆっくりと口に運ぶ。その隣で私は鬼道が持っている物と同じものを口に放り込む。
「どう?」
「口の中がパサパサする」
「まあ、スナック菓子だしね」
「これをコーンクリームと呼ぶのはどうかと思うんだが」
「まあ、スナック菓子だしね」
しかも10円だか20円だかは忘れたけど安い駄菓子だしね、とは言わずにさっきとは違う味の袋を破りくわえた。
「それは、何の味だ?」
「セサミだよ。食べる?」
「ああ」
頷いた鬼道に私はもう1つ袋を渡そうとすれば急に口が重くなった。見れば私がくわえているお菓子の反対側を鬼道がくわえている。…なにこれ、ポッキーゲームもどき?
「ふぁにしてんの」
なにしてんの、が上手く発音出来ないままに鬼道を見た。
「…まずい」
「まあね、って違くてさ」
なんとか飲み込んだ1口分と鬼道が食べた分を引いた残りのスナックが床に落ちた。
「なにしてんのさ」
「食べるか聞いたのはお前だろう」
「そうだけど、私が言いたかったのはもう1つの食べる?ってこと!」
私はまだ未開封の袋を鬼道に投げつける。鬼道はそれを上手くキャッチに机に置いた。
「別に1口くらいいいだろう」
「よくない!」
「今更何を言うか。もっと他の事もしてるじゃないか」
「うるさい!」
うるさいうるさいうるさい!鬼道の馬鹿馬鹿!、と私は叫んで鬼道の部屋を出た。
部屋を出るときに床に落ちたスナックを踏んだが今はそんなこと気にしていられなかった。
あんな事をナチュラルにする鬼道がとても恨めしかった。