鬼道さんと庶民生活 | ナノ



「まだか」
「まだ」

「まだか」
「まだ!」

…このやり取りをこの3分間で何回やったことか。もう両手両足じゃ足りないと思う。

「ま…「まだって言ってるでしょ!少しくらい待ちなさい!」

そもそも、ことの発端は半田や豪炎寺と話していた時にまで遡る。半田が今日の昼食はカップラーメンだった、という話に私と豪炎寺がそんなんじゃ駄目だ、と言った時の鬼道の一言。

「カップラーメンとは美味いものなのか?」

知識として知ってはいるが食べたことはない、と言う鬼道に私と半田は相当びっくりした。豪炎寺はああ、そうだろうなって納得してたけど。

で、なんでか知らないけど私が鬼道にカップラーメンを食べさせてあげることになって仕方ないから近くのスーパーで1番メジャーであろうカップラーメンを買って鬼道を家に連れてきた。
お湯を沸かしている間は大人しくしていたけど、お湯が沸騰してベリッとカップラーメンの蓋を剥がしてから鬼道は私の周りをうろうろして落ち着かない。

「そんなに食べたいの?」
「ああ」
「なんで?」
「…お前が食べたことがあるものを食べてみたいからだ」

え、ちょやだ、なに可愛いこと言ってんのこの人。どうしよう、すっごく可愛いんだけど。

「あ、3分だぞ!」
「…うん、ちょっと待ってね」

固定に刺したフォークを抜いて熱いから気をつけてね、と言って鬼道に渡した。

「どう?美味しい」
「不味くはないし、まあ美味いんだろうな。だが、」
「だが?」
「これをラーメンと言うのは何か違う気がする」

確かに味は普通のラーメンとは違うよね。

「なあ、」
「うん?」
「カップ焼きそば」
「は?」
「カップ焼きそばというのもあると聞いたが」
「あ、うん」

カップ焼きそばがどうかしたのか。

「…今度作ってくれないか」
「うん?いいよ?」

作るってものでもない気がするけどね。

「でも、なんで?」

カップラーメン同様、普通の焼きそばとは味は違うと思うんだけど、と言ったら鬼道はゴーグルを外しながら言った。

「さっきも言っただろう、」

お前が食べた味を知りたい

(…その瞳でその台詞は反則なんだけど、鬼道)(自覚してるに決まってるだろう)


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