鬼道さんと庶民生活 | ナノ



ガタンゴトン、と音を立てる乗り物に私と鬼道は乗っている。つまりは、電車。これから3つ先の駅まで買い物に行く予定だったんだけど、私は既に疲れていた。

電車に乗るのがこんなにも大変だなんて知らなかったよ。

チラ、と隣を見れば興味深気にあちこちを見回す鬼道。なんでも、電車に乗るのは今回が初めてらしい。私はそれを聞いて思わず小さく舌打ちしたのけどそこはご愛敬。

だって、電車に乗るのに切符を買う(当然鬼道は例のタッチで乗れるカードを持っていないから)時に小銭を持っていなくて後ろで何人も待っていたのに鬼道は切符売場で唸っていた。大迷惑だ。

それから、ホームの下り側に行かなくちゃいけないのに上りの方へ行こうとするし。

いざ電車に乗れば子供のようにキョロキョロするし。

「おい、」
「はい?なんかあった?」
「あれは時刻表か?」

そう言って鬼道が指差したのはホームの電子看板。

「時刻表とはちょっと違うよ。次に来る電車を教えてくれるの。時刻表は下にある普通の看板」
「そうか」

鬼道は不思議そうに電子看板を眺めている。幼稚園のガキか貴方は。

「苗字」
「うん?」
「電車とは面白いな」
「そう?なら良かった」

何が良かったのか分からないけれども。…まあ、鬼道が楽しそうなので良しとするべきかな。

隣で普段は見せないような顔で辺りを見ている鬼道に幸福を感じた。



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