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「じゃあまず、俺がここにいる理由から話そうかな。」

ニッコリ笑う神威。




「6年前……師匠が俺達をここから脱出させたあの日、俺達は地上に出た。

あの後、俺達は師匠が言ったように警察に駆け込んだ。
警察はまだ幼かった俺達を保護してくれたよね。
そしてそれぞれ施設に預けられた。俺と総悟は残念なことに離れちゃったけど。

施設に預けられる予定だった日、俺、捕まっちゃったんだよねー。
時雨の連中に。
いや、それはさ、抵抗したよ?
でも相手は年上ってのもあったし、いっくら攻撃しても痛みを全然感じてないようでさ。もうお手上げだったわけ。
多分髪色を覚えられてたんだろうね。
で、捕まってまたここに逆戻り。
そこでさ、俺は反逆者として処刑されてもおかしくなかったんだ。
でもね、とある人の遺言によって俺は処刑されずに済んだ。

とある人ってのは……師匠だ。

師匠は俺達と別れた後、時雨の中心部に行って俺達の資料を全部抹消したんだって。だから追っ手が追ってこなかったんだと思う。俺は例外だけど。

資料を消した後、師匠は抵抗をやめ、大人しく捕まり、時雨の創設者でここを総統していた方によって処刑された。

そのとき師匠が最期に言ったらしい。


『頼むからあの子達に手を出さないで欲しい。あの子達の命の代わりに私のこの身体を自由に使ってくれて構わないから。』



なんとたったそれだけの言葉で、俺は処刑されずに済んだんだ。


今となってもなんでそんな言葉に上が説得させられたのかが分からない。


そして俺はそのまま白雲子から赤雲者になった。




これが俺が今ここにいる理由、かな。」


神威が喋り終わった。


「………。」


俺は、何も言えなかった。

余りにも、情報が多過ぎて頭の中で処理されない。

耳鳴りが聞こえて。
疑問がぐるぐる渦巻いている。
その渦から一つの疑問を必死に掬い、言葉にした。


「師匠は……」

「ん?」

「師匠はそのあと…どうなったんで…ィ?」

「死んだ、って言ったら1番いいのかな。」

「…!」

死……んだ?師匠が?


あの、銀色の長い髪の、綺麗な師匠が?


「う……そだ………。」

「嘘じゃない。現実だ。」


ずっと、気になっていた。

あのあと、師匠がどうなったのか。

師匠が死ぬわけない、生きていると何の根拠もなしに信じていた。

いつかまた会えると、また笑い合えると。

生きていて……ほしいと。

「……そんな…。」

息が浅い。

うまく酸素が吸えない。

肺まで酸素が届いておらず、喉で呼吸をしているよう。

喉にある得体の知れないものが吐き出せそうなのに、吐き出せない。


心臓が現実というものに踏み潰され、悲鳴をドクドク上げている。


「………ぅ…」


目の前がくすんでみえた。
あぁ、今自分は。


泣いている。


「…くっ……ひ……うぁぁ……。」


子供みたいにボロボロ、涙を流していた。

そんな俺の顔に何かが当てられる。

「か……むい…?」

顔を上げれば神威が俺の頬っぺたに手を当てていた。

「泣かないで。」

そう言う心配そうな神威の顔。


そして涙を拭ってくれた。
俺は黙ってその手に身を預ける。

「大丈夫だよ。」

ひっくひっく泣いている俺に声が降りかかる。


「だって」


――師匠の仇はちゃんと取るから――





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