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「…しばらくの間、ここでお待ちください…。」

全身真っ黒の服で覆われている気色悪ぃ奴に連れてこられたのは、さっきまでいた隣の部屋と余り変わらない造りになった薄暗い部屋。


―…電気少なっ。

天井からは小さい蛍光灯が一つ。

扉から少し歩く。

すると何かに躓いた。

「どわっ!」

前のめりになりなんとか転倒を免れた。

「何だぁ一体……――!!」

躓いたものを見れば、人のようなもの。


しかも、有り得ない程見覚えのある、長髪。


「なっ…!桂!?」


よくよく見れば他にも横たわっている人影が二つ。


「坂田!?高杉まで…!」


銀の天パ、左目眼帯の同僚も仲良く横たわっている。
それぞれ俺と同じ機械っぽいもので手足を拘束されていた。

「なんでこいつらが…?」

「その方々は……」

黒い奴が喋りだした。

「つい先程、貴方をここに連れてきたあと、ここへ繋がる‘道’の辺りにいたのを私が捕らえました。」


抑揚のない声。


そんな聞きたくもない声を無視して仲間の意識を確認していく。

「おぃ!しっかりしろ!目を覚ませ!」


三人とも身じろぎはするので気を失っているだけのようだ。


ひとまず安心する。

「それではしばらくお待ちくださ「待て。」


部屋を出ていこうとするそいつを引き止める。

さっきから感じていたこいつの違和感。

まるで人形のように。


「おめぇ…なんでそんなに感情がねぇんだ?」


俺はこう見えても一応警察だ。職務柄相手の表情を読み取ることに長けている。

そんな俺にも、こいつが何を思い、何を考えているのかが、全くと言っていいほど読み取れない。

声色からも、顔からも、仕草からも。


今も、その光が宿っていない目でこちらを見ている。
勿論、何も読み取れない。

少しの沈黙の間、ようやくそいつは口を開いた。


「…わかりません。」

「わからない?」

「考えたことありません。そもそも」


――考えるという意味すら、よくわかりません。
私は命令のままに行動するので。

「……。」

冷や汗が流れた。
言葉が出てこない。


「……お前以外のここにいる奴ら全員そうなのか?」

突然声が聞こえた。


振り向けば。

「高杉っ!目ぇ覚めたのか!」

身体を起こしている眼帯。

「よぉ土方。おめぇも拉致られたのか。ったく奇捜班が揃いも揃ってこの様とは情けねぇな。」

チッと舌打ちし、桂と坂田を見下ろす。

「で、人形よぉ。どうなんだよ?」

ギッとそいつを睨み付ける高杉。

邪眼にも全く動じず、「…それはお教えできません。」とだけ答えた。


さすがにそれは無理か。さっきの神威とやらも組織がどうとか言ってたしな。

「それでは。」

マントをひるがし、そいつは部屋を出ていった。





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