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『何こいつら…まるで人形みたいだ。』

奴らの目に気付いた三つ編みが呟く。

『とにかく、エレベーターに乗りなせィ!』


同じ部屋だった奴らがエレベーターに乗り込む。


その間、襲ってくる奴は俺と三つ編みで何とか気絶させ、食い止める。

はっきり言ってこの中で三つ編みと俺が1番強かった。
ボタンを押せば、4人乗った箱の扉がしまり、それぞれ上へと昇る。

エレベーターに背を向け、三つ編みと一緒に床を蹴った。






『うっ…ぐぁ!』

目の前の敵に集中し過ぎたせいか、背後からの敵に気付かなかった。

左脇腹に蹴りを入れられ壁に飛ばされる。


『ハッ…!ちっくしょっ…!』

―…全く気配に気づけなかった!何なんでィこいつらは!

痛さにうずくまっているとコツ…と前方から足音。

顔を上げれば、冷たい目。

―…ここまでか。


覚悟を決めかけたとき。



『‘生きろ’』


師匠の声が聞こえた気がした。

ハッとなる。

目の前の奴の身体がふっ飛ばされた。


『‘何があっても’』


ふっ飛んだ奴がいたところの後ろから現れたのは



『‘絶対だ’』




銀髪の師匠だった。


『し………しょ…う…』


呆然としていると、腕を捕まれ、立たされた。


よく見ると、師匠はボロボロだった。


『師匠…。何でこんなに『何故破った。』

俺の言葉に師匠の言葉が重なった。

『え…?『なんで今、生きようとしなかった!!!』



三つ編みが全員を倒したらしく、辺りはサイレンの音に包まれていた。

それでも、師匠の声は廊下に響き渡る。


『……すいやせんでした。』

目の前の師匠に、謝るほかなかった。

俺の腕を掴んでいる師匠の手が、震えていた。

顔も苦しそうに歪んでいて。


胸が締め付けられる。


『…とにかく、生きててよかった。』

ポツリ、師匠が言った。

『師匠、一体どーなってんの?』

三つ編みが問いかける。

『…君達は、今からここを出る。』

『あのエレベーターに乗って?』

『時間がない。急ぐよ。』
そう言うや否や、身体が持ち上げられた。

『ぅあ!?』

浮遊感を感じたが、直ぐに冷たい床に座らされた。

エレベーターの中。

三つ編みも乗り込む。

『これ……あげる。』

そう言われ師匠に手渡されたのは、いつも師匠が腰に付けていた小さい鞄。

『え……いいん…ですかィ?』

『うん。』

にっこり笑う師匠。

そして、俺と三つ編みを一緒に抱き寄せた。


『…二人とも、絶対』


‘生きろ。何があっても’


スッと師匠が離れていく。

『…え』

師匠がエレベーターのボタンを押したのだろう、扉が閉まっていく。

『師匠!師匠も一緒に…!』

俺の声は師匠の背中に届いているのだろうか。

『しっ……』


そのとき、師匠がこっちを振り向いた。


‘さよなら。’


悪戯っ子のような、笑顔で、確かに、そう言った。


『しっ……―!』


昇っていく。
エレベーターが音を上げて。
離れていく。
さっきまで目の前にあった銀髪が。
冷めていく。
さっきまで身体を包んでいた温もりが。


『ししょぉおおーーーー!!!!』








このさよならは、ひと時のため?

それとも永遠(とわ)の別れなのか?





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