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師匠の言った通り、廊下を静かに走っていくと、ドアが開いたエレベーターが二つ見えてきた。
二つのエレベーターの間にはエレベーターのボタンが二つ。
どちらも上を指し示す三角形のボタン。
『これか…!』
『あ、ちびっ子がやってきたみたいだよ。』
三つ編みの子が指で指した方へ目をやると、俺達より小さい子がわらわらとこちらに走ってくる。
『お前ら、5人ずつこん中乗って。静かにしなせぇよ。』
『分かった!ありがとうお兄ちゃん!』
礼を言われ少し恥ずかしくなる。
ボタンを押すと、ドアがしまり、(あ、ガラスの窓付いてる)エレベーターが音を出しながら上昇していく。
『ねぇ。』
三つ編みに話しかけられる。
『この子達をここへ来るようにしてるのって師匠かな?』
『さっき師匠そう言ってたじゃねーか!』
俺はちびっ子を並べさせることに必死だ。(頼むから言うこと聞いてくれ!)
『でもさ、確か一つの班につき一人の大人が付いてたはずだよね?』
『それが何でィ!』
『就寝後、部屋から出たらダメっていう教えも…あったよね?』
ピタッと俺は動きを止めた。
『…何が言いたいんでィ?』
『さっき師匠言ってたよね?‘一世一代の脱出ショー’って。それってさ、つまりここから脱出することを意味するんだろ?』
『……多分。』
『要するに』
三つ編みが廊下を見る。
『師匠はここの掟を破った、てことになる。』
――――ウゥウウウウ!!
そのとき、廊下にサイレンが響き渡った。
『『!!』』
サイレンと共にこちらに何かが走ってくる。
たくさんの、俺達より年上の人ばかりだ。
『なっ!?』
先頭を走っていた奴が、攻撃を仕掛けてきた。
ギリギリでかわし、相手の鳩尾(みぞおち)に拳を入れる。
『何なんでィ!こいつらは!』
『服を見る限り、ここの人達だろうね。』
三つ編みも手当たり次第、気絶させていく。
そこで、ふと気付いた。
何故さっきサイレンが鳴る前に走ってきたのはちびっ子で、鳴った後は年上ばかりなのだろうか。
しかも、攻撃してくるのは年上のみ。
さっき師匠に言われた事を思い出す。
‘君達の後に君達より小さい子がたくさん来るから、その子達を先に乗せること’
師匠は‘君達より小さい子’と言っていた。
なんで‘小さい子’と限定したんだ?
ぐるぐる考えていると目の前を何かが掠めてきた。
反射的にのけ反り、体勢を立て直すと、足を下ろしていく年上の人。
どうやらそいつが俺を足で狙ってきたようだ。
『んにゃろっ!』
そいつの後ろに回り込み、右脇腹に蹴りを入れてやる。
左の壁にそいつはぶっ飛ばされ床に倒れたが、痛みを全く感じていないように立ち上がった。
『!』
そいつの不死身さにも驚いたが、こっちを見据えるそいつの目。
光が、宿っていなかった。
その場にいた全員の目をぐるりと見渡し、ハッとなる。
ちびっ子はもう全員エレベーターで上に到着しており、いるのは俺と三つ編みと同じ部屋で過ごした8人とたくさんの年上。
年上の奴ら全員、目には―――闇しかなかった。
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