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黄昏時。


俺はとある道を歩いていた。

歩きながら今日の朝、奇捜班本部での事を脳内で再生していた。




『―…これで、俺の報告は以上だ。』

『俺も。ヅラは?』

『ん?主らそんなに俺のここ…』

『そうだ土方。上層部(うえ)に報告したか?今回のやつ。』

『高杉俺まだ喋ってんだけ…』

『あぁ。まぁさっきの事は伏せておいたが。』

『ちょ…』

『で、これからどうする?』

『た…』

『今のところナイトからの予告状は来てねぇから、各自でガサ入れるか。』

『じゃあ夜9時に一旦ここへ帰る事。そんじゃ、解散。』

俺と高杉が出口へ向かう。

『桂どした?』

椅子にぼーっと座っている桂に問いかける。

『…いや、なんでもない。』







―…桂の声は泣きそうだったな。仕方ないよな。桂の心の報告書なんて聞きたくねーし。うん。


なんて桂に詫びながら道を歩く。


ふと、足を止め、振り返った。
周りはいつの間にか人はいない、寂しい所。

―…なんか、さっきから誰かに見られてる気がすんだよな。


構わず足を再び進めるも、後ろが気になる。

―…意識範囲広げるか。


まずは相手が何かを気配で感じ取ることにした。

集中し、ジワジワと意識範囲を広げていく。



掛かった。

だが


―…なんだ、これ?明らかに人の視線なのに


感情がない。

―…気持ち悪ぃ。まるで人形に睨まれてるみてーだ。

現在位置からは大分離れた15メートル範囲の中に、そいつは今いる。

―…今から走ったらギリギリ捕まえられるか?


とにかく得体がよく分からない奴だから、取調べを行うか、と考えたとき。


――――ジャキ。


「!」

首筋に何かが当たる。

ひんやりと冷たいそれ。
刃物。

背後を取られた。

―…いつの間に!?


俺が驚愕している中、後ろから声が聞こえる。

「警視庁奇怪捜査班、土方十四郎……お間違いないだろうか。」

「!」

若そうなその声。

「…なんで俺を知ってる?お前……誰だ?」

後ろを振り向けば首をかっ切られ、即死。

だから前方を睨み続けた。

「…私が所属しているのは『時雨(しぐれ)』という名の組織です。」

「なっ…!時雨ってあの…!?」

更に驚愕している俺に構わず、そいつは口を開く。

「今回、貴方を捕らえよとの命を授かりました。なので」

―…ドカッ!

鳩尾(みぞおち) を喰らった。

「ウッ!」

「貴方を拉致します。」

地面に倒れ込む。

薄く目を開ければ目の前に黒いマントを身に纏い、顔を布で巻いている影。


風が吹いた。


マントがはためく。

消えゆく陽が照らしたのは、そいつの黒い服の左胸のところに刺繍された、赤黒い雫に白い雲がたなびくマーク。


だんだんと意識が薄れていく中、有り得ないのに、有り得てしまったことに気付いた。

奴は俺の真後ろにいた。

奴は俺に鳩尾を喰らわせたとき、どこにいた?

普通鳩尾を打つときは真正面からでないと上手く入らない。

つまり奴は

―…俺の目にも止まらぬ速さで真正面に来たってのか…!



ちょうどその時、陽が落ちた。

夜が始まる――。





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