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「おぃ土方!」

肩を落としながら部屋に戻ると誰かに前方から呼ばれた。

声がしたほうに目を上げると高杉の姿。

そういえばさっきナイトを追った辺りから見かけていなかった。

「高杉おめぇどこ行ってたんだよ。俺達ゃあ全力疾走してナイト追ってたんだぞ。」

「ヅラは?」

「マジ走りしたせいで外でへばってる。」

「ふん。あいつ武道派じゃねぇしな。………で、馬鹿みたいに走って、結果ナイト捕まえたのかよ?」

皮肉めいた高杉の一言にぐっと詰まる。

「……逃げられた。」

苦い言葉を吐き出す。

「だろうな。奴ぁ外なんか出てなかったんだから。」

……え?

思わず高杉を凝視してしまった。

「…ナイトが外に出たと、叫んだ刑事がいただろ。」

突然問われ、は?と間抜けな声が出た。
そんな俺の反応が気にくわなかったらしく、チッと高杉が舌打ちする。

「だから、ナイトが外に出たと叫んだ白いコートのフード被った奴だよ!」

そういわれ、記憶を少し漁る。
ナイトが落ちて、光って、消えて、誰かが叫んだ。

ナイトが外に逃げた、と。
入口を指差しながらそう叫んでいた白いコートの刑事が浮かび上がる。

「あぁ!あいつか。白いコートのフード被った刑事。」

「だからさっきからそう言ってんだろうが。…まぁ思い出したならそれでいい。」

「その刑事がどうかしたか?」

「そいつ、俺にぶつかってきたんだかな…この俺に謝りもせず走っていこうとしやがった。」

マジ顔で呟く高杉。

「はぁ?」

俺は呆れ返る。

「何お前、そんなことでイラついてんのか。」

「……黙って最後まで聞け。」

「分かった分かった分かった!分かったから拳銃直せ!」

高杉が拳銃を直した。
そして口を開く。

「俺はそいつを引き止めようと腕を掴んだ。」

ツッコむのを必死に我慢する。

「そしたらな、手に血が付いた。」

どんだけ握力強いんだおめーは、等のことは心の中にしまい込む。

「そいつぁ紛れもねぇ、ナイトだった。」

「……………………………………ゴメン、俺の聞き間違いかもしれねぇが、今ナイトっつった?」

「あぁ。」

高杉が頷く。
一方俺の頭は思考回路が停止。

「自分の手に血がついて、つい腕を離したら奴ぁ窓から外へ逃げやがった。後を追ったが……追い付けなかった。」

思考回路が停止中の俺はなんとか会話を成立させようと回路に僅かな電流を流した。
ようやく出てきた言葉は。

「結局お前も逃げられてんじゃねーか。」




………銃声と共に俺の左耳の上の髪が何本か焦げた。





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