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伊東が合図をし、全員が中へ突入した。


青白い月明かりだけが照らす部屋の中、俺の右目が捕らえたもの。

5枚のうちの真ん中の窓の前にいるナイト。


伊東が何か叫んでいる。


説得しているようだ。

説得中、俺はじっとナイトを見上げていた。
夜眼のきく目で。



数日前、俺は初めてターゲット(獲物)を仕留められなかった。
銃の腕は自分でも立つ方だと思っていた。
なのに…負けた。

……屈辱的だった。


だが、反面。奴に弾を避ける姿に身体が高ぶったのも事実だった。


―…いつか必ず自分の弾を当ててやる。

そんな思いが俺の中を渦巻いていた。

―…だから


ここで撃たれんなよ。




伊東の部下が動いた。

ナイトは平然としていやがる。


部下が右の螺旋階段を上ろうとしたとき。



――ガシャァアン!!

「!!!」

ナイトの後ろの窓が割れた。

いや、割れたと言っても別にガラスが跡形もなく割れたわけではない。
バレーボールで使うボールぐらいの穴が窓の上のほうに開いただけ。



ガラスが飛ぶ一瞬。

ナイトが足を踏み込み、左腕を伸ばした。


ナイトはそのまま手すりを乗り越え、落下した。


奇捜班と伊東以外のたくさんの部下が駆け寄るやいなや、ナイトが落ちた方向から強い光。


「!」

カッと光った後。


そこへ落ちたはずのナイトが、いない。

「なっ…!伊東刑事!ナイトが消えました!」

「「「「!?」」」」

「何!?そんな馬鹿な!」

伊東が吠える。

うろたえる刑事ども。

「…おいおい、冗談だろ?」

横で土方が呟く。
目には驚愕の色。

「…怪盗は自分の姿消せるなんて聞いた事ねーぞ!」

「冷静になれ土方。」

俺が諭す。

「…人間がそう簡単に消えてたまるか。」

目の前では今だにうろたえている刑事。

「何をしている!早くナイトを見つけだせ!」

「といっても伊東刑事!もう奴はここにはいません!」

伊東はどうやら突然の出来事に頭が混乱しているようだ。

部下に指示ばっかりしてないで自分で探したらどうなんだ。

と、その時。

「ナイトだ!ナイトが入口から出ていったぞ!!」





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