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時刻は8時58分。


俺は数日前来たベランダへまた降りた。針がねで5枚のうちの真ん中の窓の鍵を開ける。


……と、視線を感じた。

警察かと思ったが、違う。

「…?」

殺気がない。

視線は確かに自分に向けられているのに、殺気が含まれていないのだ。

殺気ばかりでなく、感情一つ、この視線には入っていない。


……どういうことだ?

まるで、人形にじっと見つめられているみたいだ。

何者か、考えを巡らせる。
………まぁほっとくか。もう9時だし。

無理矢理視線を振り切り、中へ入った。

窓の下にあるベランダに行くための通路に立つ。

そして通路の手すりにロープをくくりつけ、ロープを使い床に軽やかに着地した。

一斉に浴びる殺気の視線。

…そんだけ殺気出してたらいくら気配殺してても無駄だっての警察方。

でも突撃してこない。

なら今のうちだと、『マヨリョーシカ』が入ったケースに近付く。


アイマスクを暗視モードにしているからぶつからずに進めた。


針がねをケースの鍵穴に突っ込み、手応えを探る。

だが、全く手応えを感じない。

この場合の可能性は2つ。

一、鍵が特殊なもの。
二、俺の感覚が鈍くなっている。


………いや、もう一つある。
そっとケースに手をかけ、静かに両手で持ち上げた。
『三、元々開いている。』

―…でも何で開いてんでィ?
『マヨリョーシカ』はこれに違いねぇがこれじゃあ盗んでくださいって言っているようなものだ。

そう思いながらもそれを持参のタオルで包み、腰の鞄にしまい、いつも通り黒のカードをケースに入れる。。


すると、一気に殺気が強まった。

―……あぁなるほど。油断させといて逃げる直前に捕らえるって作戦か。
ならその作戦に付き合ってやろう。
大丈夫、侵入したときに真ん中の窓の鍵は開けてるし。
いざとなれば視界を悪くさせるための閃光弾を使えばいい。

垂れているロープは使わず、あえてベランダへの通路へ上がるための向かって右の螺旋階段を上る。

わざとらしく、真ん中の窓に手をかけたとき。

部屋のドアがバァン!と開き、わらわらと人が入ってきた。





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