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「予告された時間は9時ジャスト。」
俺予告時間聞いてないんだけどぉお!バ桂のやつ教えとけやぁぁあ!
「まず、ナイトが盗むまで部屋の前で待機。ナイトが逃げようとしたら私がタイミングを見計らい合図を送る。合図が出たら全員部屋へ進入、ナイトの身柄を確保。以上だ。」
「おいおい、随分とシンプル過ぎる作戦じゃねーか。全員進入って、ナイトが窓から逃げたらどーすんだよ。」
「心配は無用だ高杉君。我々は刑事。いざとなれば発砲すればいい。」
「「「!!」」」
「なんだ、そんなに驚くような事かい?勿論致命傷にはならないような足などを狙うがね。」
「てめ…!」
俺が伊東の胸ぐらを掴もうとしたが、桂に肩を掴まれた。
「やめておけ。」
「離せ桂!」
「こっちは協力してもらっているのだ。文句は言えん。」
「だが…!」
「…土方。」
桂に真っ直ぐ目線を合わせられる。
だが桂自身気付いているだろうか。
俺の肩を掴んでいる手が…震えているのを。
「…チッ。分かったよ。」
そう言い乱暴に桂の手を払いのけた。
「すまない。どうやら気分を悪くさせてしまったようだね。」
「いや、大丈夫だ。」
俺のかわりに桂が答えた。
「そうだ、伊東さん。『マヨリョーシカ』はどこにあるんですか?」
桂が話を変える。
「あぁ、あれだよ。あの部屋の中央にあるケースの中だ。」
指さされた方へ行くとケースの中に高さ10センチ程の木でできた人形が入っていた。
「専門家の話によると木の器にも中のマヨネーズにも特殊な加工が施されているらしい。」
誰も頼んでいないのに説明しだす伊東。
じっと人形を眺めた。
中に大好きなマヨネーズが入っているというのに頭にあるのは亜麻色の髪のみ。
「あぁそれとナイトを油断させるためケースの鍵はかけていないから。」
伊東の言葉を軽く受け流しながら亜麻色の事を考えていた。
…重症だな。俺も。
「さて、そろそろ9時だな。奇捜班の方、部屋を出ますよ。」
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