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外の月明かりに影ができた。
「あの暗闇の中、俺を見つけられるとは。」
―…月をバックに浮かび上がった栗色の頭。黒色(いや灰色?)の目玉が描かれたアイマスク。
「当たりめーだろ。今夜は満月なんだからな。…それにてめー。わざと窓鳴らしただろ。」
「そこまでお見通しとは。」
「お前はっ…!」
俺はそいつが付けているアイマスクに見覚えがあった。そう…
「改めて、名乗らせて頂きやす。俺の名は怪盗ナイト。今宵、『フィラオのバンテージ(包帯)』を盗みに参上しやした。」
――怪盗ナイトだ。
「怪盗ナイト、お前を逮捕する。」
高杉の声がこだまする。
「なら、捕まえてみなせェ。」
ニヤリと笑うナイト。
同じくニヤリと笑う高杉。
笑うやいなや、銃口を窓に向け、5発発砲。
ちょっとォォオオオ!?
「高杉ぃぃいいい!お前何やってんだぁぁああ!」
「黙れ土方、気が散る。」
「いやそうじゃなくて!当たったらどうすんだよ!」
「『当たったら』じゃなくて『当てる』ために拳銃はあるんだよ。」
前言撤回。こいつやっぱまともじゃねー!
「高杉やめろ!あのお綺麗な顔に傷でも付いたらどうするつもりだ!」
桂も加勢に入った。
すると高杉が舌打ちした。
「その心配はいらねーよ。だってあいつ…―。」
高杉が拳銃をおろした。
「俺の弾に一発も当たってねー。」
な!?
急いで窓の方を向く。
仁王立ちでナイトは無表情でこちらを見下ろしていた。
「どういうことだよ!?」
「どうしたもこうしたもねーよ。全部避けられた。それだけだ。」
「高杉の弾を避けた…―。」
愕然とした。
あの高杉が、だ。
「もうおしまいですかィ?」
疲労の色など微塵も見せない声色。
「なら俺は失礼致しやす。目的を達成できたんで。」
そういって腰のかばんらしきものから取り出したのは…白く長い布。
包帯。
「「「!!」」」
急いで包帯が入っているはずの向かって右側のケースに駆け寄るが、中は空。
「それでは。」
そういって、ナイトは窓を開け、外に出た。
「追うぞ!」
誰かが叫び、俺達は部屋を出た。
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