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その後ろ姿をしばし俺はぼーっと見つめていた。

…顔に似合ってる華奢な身体つき。


警備員の制服も似合ってるし………って何考えてんだ俺はァァァ!!!!

今は仕事真っ只中!!!!

集中!!!集中!!!

………

………あ、集中したら何か落ち着いてきた。

とにかく、この状況を整理しないと。


…にしても、あんな弱そうなやつが警備員って大丈夫なのか?

こっちの40歳ぐらいのぶっ倒れてる警備員のほうがまだ強くは……ん?

こいつ、無線持ってんじゃねぇか。
たしかさっき部屋を出ていった方の制服にもついてたような…。なんであいつ、無線使わずわざわざ館長呼びに行ったんだ?


「なぁ、桂。ちょっと聞きたいことが…」

桂のほうを振り向いて無線のことについて聞こうとした…。

でも桂は…顔をうっすら赤く染めながら虚空を見つめていた。

「あの〜、お〜い。桂〜。起きてる〜?」

「…なっ!?うわっ!なんだ土方か…。いきなり話しかけるな。びっくりするではないか。」

「いや、さっきから話しかけてたんだけど。 ………何、惚れた?」

「ハァァァア!?貴様仕事中だぞ!真面目にやれ!」
…なんで俺が怒鳴られなくちゃならねーんだ。

「そんな事より、何の話だ?」

「あぁ、それがさっき出ていった警備員。なんで自分が持ってる無線使わずにわざわざ館長呼びに行ったと思う?」

「…無線機が壊れてたのではないか?」

「……あ、それともう一つ。『怪盗』っていうのは『強盗』とは違うよな?」

「まぁ、強盗は無理矢理ものを奪うことだが。怪盗はよくわからん。」

「ならさ、これみたいに無理矢理ケース割ってもの盗むのは『怪盗』じゃなく『強盗』みたいじゃないかと思わねーか?」

「…確かにそうだな。」

「警察の方々!金塊が盗まれたという話は本当ですか!?」

二人で考えこんでたら、館長が走って部屋に入ってきた。

「なっ!なんという有様だ!」

粉々になった空のケースと気絶している警備員を見て驚く館長。


そして割れているケースの近くに駆け寄る。

倒れている警備員を無視して。


しばし、館長は突っ立っていたがふと首を傾げた。

「? おかしいな…。」

「どうかされましたか?」

桂が問いかけた。


「いや、このプレート。『ヒマヤラ山脈の金塊』って書いてあるんだが。』

「それがどうかしましたか?」

「『ヒマヤラ山脈』じゃなくて正しくは『ヒマラヤ山脈』だ。そもそも『ヒマヤラ山脈』なんていう山脈なんて存在せん。」

「「………………え?」」





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