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「させるかぁぁぁぁぁぁ!!!!」


土方が立ち上がり台本を床に叩きつけながら叫んだ。

「おい、銀八!てめぇ、こんな台本作りやがって一体どういうつもりだ!」

「どういうつもりって沖田くんとキスするつもりだけど?」

銀八がニヤニヤと顔を歪ませながら答える。

「ふざけんなっ!」

土方が銀八に殴りかかる。だが、銀八はひらりと身をかわし、沖田の机の前まで行って沖田の両手を握りしめる。

「沖田くん、先生と接吻してくれるよね?」

「はィ?」

沖田は訳がわからず、戸惑う。

「いい加減にしろぉぉぉぉ!!!」

土方が銀八にまたもや殴りかかる。銀八は教室を逃げ回る。

「ねぇ、近藤さん、接吻ってなんですかィ?」

台本は読むのがかったるく、接吻の意味がわからない沖田が後ろの席の近藤に問う。

「え、いや…子供は知らなくていいの!」

近藤は焦りまくりで答える。

沖田こと沖田総悟は色恋にはとことん疎(うと)い。まぁ過保護な沖田の幼なじみ近藤と土方が沖田にそういう事を知ることのないよう気を配ってきたからなのだが。
そのせいか、沖田は危機感というものを全くと言っていい程持ち合わせていないのだ。
俗に言う「無防備」なのである。
更衣室で周りの目を気にせず、平気で上半身裸になるような無防備さ。
なぜか銀八までわざわざ更衣室に来てなめ回すように沖田の裸体を見る始末。

「ねえ、高杉。俺と高杉通行人AとB役なんだけど台詞もしかしてないの?」

オレンジ色の髪の毛を三編みに束ねている神威が高杉に話しかけた。

「…台本読んだ限り、ねぇみたいだがな。」

素っ気なく答える左目眼帯の男、高杉。

「フツー屋上に通行人がおる訳なかろう。」

腕を組み、長髪を垂らしながら会話に割って入る桂。
「ヅラぁ、言っとくが、ヅラの役通りすがりの猫だけど?」

高杉が呆れたように言う。
「だが、俺は台詞があるからな。大事なナレーターだぁぁぁ!」

桂がハッハッハと笑う。

「でも、これ本気でやるのかなぁ?設定めちゃくちゃだよ?ツッコミ所満載だよ?なんでって4回使って代わりに俺が突っ込んであげようか?
なんで猫や木が喋るの?
なんで担任が主役なの?
なんで城に屋上設備?
なんで総悟にキスするのが俺じゃなくて担任なの?」
「いや、あの神威さん。最後のは明らかに自分の意思でしょ。」

ここにきてようやく出番の新八。ただ神威にツッコミ役を取られたせいか少々ツッコミに棘があるのは気のせいだろうか。

「そんなこといったって皆も総悟とキスしたいでしょ。」

「…。」

赤面になり黙る一同。(ただし高杉は机に頬杖をついたまま、外を見てたので顔は見えなかった。)

「なぁ、ザキ。接吻って何でィ?」

斜め後ろの山崎に真っ直ぐ目を見て聞く沖田。

「え!?う、あ、その…」
「沖田君、先生が教えてあげよう。放課後体育館の裏においで〜。」

今だに土方に追いかけられている銀八は真っ赤になっている山崎の言葉を遮る。
「総悟を馴れ馴れしく誘うんじゃねェェ!!」

「え〜、いいじゃんか別に。お前ら付き合ってる訳じゃないんだろ?」

「ぐっ…。」

言葉を詰まらせる土方。

「ほらな。だから俺が沖田君にキスしようとお前がとやかく言うことじゃないってこと。あ、ちなみに役変えろとかいうの無しな。逆らった奴は即刻さくら班に行ってもら〜う。」




結局本番まで役はそのままで放課後に練習が行われた。
銀八は「沖田君は俺のもんだということを全校生徒に思い知らせてやる!」ということで練習中、沖田にキスすることはなかったのだか、本番でキスするという願望はバレバレだった。





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