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「ありがとうございましたー。」
眩しい店内からシャンプーの入った袋をぶらぶら下げて、家の方向に歩き出す。
住宅街でも比較的裕福な家庭が集まるこの辺はさすがに22時過ぎているだけあって、静かで落ち着いている。(俺やギン、トシのあたりは割と平均的な家が多い。)
こっから家までは歩いて10分ぐらいだし帰ったら速攻風呂入ろう、とぼんやり思いながらも、すぐに脳内に音楽が流れだした。
―…あぁー、これ何だっけ。前出たアルバム曲だったかな。
本当は歩きながらウォークマンを聴きたいけど、トシやギンに危ないからやめとけと言われてるから仕方なく脳内でセルフ再生するしかない。
ギターソロを思い出したあたりで、ふと我に返った。
―…てか、何で二人の言うこと守ってんだ、俺。
『夜に出歩くな』もそうだけど、そういえば昔から結構俺がやることに何でもかんでも意見してきてるような…まぁ今は実質一人暮らしみたいなもんだから、心配してくれているんだろうけど。
でもたまにその優しさが、二人から見れば俺はまだまだ子供なのかなぁとかぼんやり思う根源だったりする。
トシとギンの自分を見下ろす視線を思い出し、ちょっとむくれた。
「俺だっていつか身長追い抜いて見下ろしてやりまさァ。」
ポツリと呟く。早くあの二人に追いつきたい。
そうしたら、たぶん―――。
「がぁあああ!!!」
「!?」
突然の叫び声にびくっと思わず足を止めた。
誰かが苦しんでいるような声が、近くの路地から聞こえる。
続いて、ごきっとかいう鈍い音。
慌てて声のした方に駆けると、
「な、何してんでィ!!」
閑静な街並みとは不釣り合いに、男の人が倒れていた。
お腹を抱えて、口からは血が流れている。
「あ、んだおめぇ。」
うずくまる人の前に、もう一人。その人がこちらをギロリと音がしそうなほど睨みつけてくる。
あまりの光景に立ち尽くしそうになるが、うめき声にハッと我に返った。
「あんた大丈夫ですかィ!!」「う、あ…」
倒れている人に駆け寄るが、よく見ると全身の至るところに鬱血や擦り傷があった。
意識はあるものの頭から出血しているのか、地面に血が滲み始めている。
「ちょ、これ救急車っ…携帯持ってやせ「邪魔すんな。」
ぐいっと首の後ろを引っ張られ、地面にしりもちをついた。
引っ張った本人はまだ殴るつもりらしく、倒れた人に近づく。
―…これ以上やったら…
「やめなせぇ!死んじまう!」
「だから何だよてめーは。うぜぇ離せ。」
「離しやせん!」
とっさに後ろから腕を拘束しにかかった。
かなり身長差はあるけれども、腰回りにしがみつく。
「うわぁあ…!」
「あ、ちょっと!!」
そうこうしているうちに、倒れていた人が自力で立ち上がり、反対方向に走っていった。
「その傷じゃ…!」
「逃げんなおらぁ!!」
「あんたは追いかけなくていいですって!!」
とりあえずあの人がこの人から十分に距離を取るまで進ませまいと必死に押さえ込む。
すると、諦めたのか腕の中で暴れていた力がふっと抜けた。
もう大丈夫そうだと思い、こっちも回していた手を外す。
「おい。」
「はい?……っ!」
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