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「まさか風邪引いてたなんてねェ…。」

スーパーからギンの家へ向かう道で、思わず呟いた。

「健康管理が成ってねぇからだあんのバカ。」

「トシ言い過ぎですぜ。」

ガサガサと、冷えぴたやらギンの好きなイチゴ牛乳やらが入った袋が俺とトシの間で鳴る。


あのあと、とりあえず部活を中断して倒れたギンをなんとか家に送り、スーパーにトシと買い出しに行った。


ギンの両親はどちらも会社の慰安旅行みたいで明日の夕方帰ってくるそうだ。
よく学校来れたなというぐらいの高熱だったギンを無人の家に放っておくわけにはいかない。

「それで今日のテンション変だったんですねィ。」

「いっつもあんなんだからな。無理しやがって。」

「トシはちゃんと体調悪かったら言ってくだせェよ。」

「……あぁ。サンキュ。」

『俺頑張ったのー。夜中ガンガンにヘビメタ聴きながら頑張ったのー。』
無理をさせてしまった。看病くらいどうってことない。

―…にしても、ギンの両親、明日何時に帰ってくるんだろう。

「タイミング悪かったですねィ。」

「一応家着いたら電話入れとくか?」

「そうしやしょう。俺今日ギンの家泊まりやすし。」

「はぁ!?」

「へ?」

え、なんかまずかったかな?

「えっと……あ!移されるかもとか思ってんですかィ?そのへんは別に大丈夫…「違ぇ!!そんなんじゃねぇ!とにかく駄目だ!!」

トシの頑固さは今に始まったことではないけど、何か怪しい。さほど暑くもないのに汗の量がスポ根漫画並みだ。

「何なんですかィ。」

「その………。」

モゴモゴと歯切れが悪い。やっぱり怪しい。

「…っ移されでもしたらどうすんだ!!」

「それさっき言いやした。」

「じゃ、じゃあ俺も泊まる!」

「トシママが快く承諾してくれるとは思いやせんが…。」

ぐっとトシが詰まる。

トシママ…トシのお母さんは心配性だ。保育園から一緒だから何度もそういう場面を見てきた。成績大丈夫か、とか健康管理しっかりね、とか。(俺らがバンドやってるのもあまりいい顔をしてない。)

こういうところがトシは似たんだと思う。とにかく心配し過ぎ。きっと本人に言ったら微妙な顔するんだろう。

そうこうしてるうちにギンの家に着いた。

「じゃあ俺母さんに聞いてくるわ。あと何か役立ちそうなもん持ってくから!」

「頼みまさ!俺はギン家でお粥作ってやす。」

ポッケからギンの家の鍵を取り出した。

ちなみに俺ら三人は互いの家の合鍵を持ってる。
これもトシママの計らい。

鍵穴に鍵を差し込んだところで「総悟!」とトシの呼ぶ声。

「何ですかィ?」

「その…」

「?」

「お、俺が!風邪引いたときでも看病してくれるか!?」

……突然何を言い出すんだろう。

当たり前じゃねえですかィと真顔で返したら、ほっとした表情ですぐ行く!と家に帰っていった。

トシも風邪気味なんだろうか…と首をかしげながらもドアノブをくるりと回す。


ギンちゃんと寝てるかな…。





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