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「……よし、心の準備は良いか?」
「大丈夫ですぜ。」
「ああ。」
「良い?開けるよ?開けるよ?」
「うん。」
「さっさと開けろ!」
「せーの!!」
―――ビリビリッ。
「「「………いよっしゃぁあああ!!!!」」」
放課後の部室で力強くガッツポーズする俺達。下手すりゃギターのアンプからの音にも負けないくらいの声量だ。(叫び声のシンクロニズムがすごい。)
昨日ギンの家にてっぺん祭からの封筒が届いた。
1ヶ月前、何とかギンもトシも部活停止を回避し、ビデオテープをてっぺん祭宛てに送ったのだ。
せっかくだし3人で開けようってことになって今に至る。
上の俺達の叫びからわかるように、手紙には『厳正な審査の結果、貴殿方のバンドを一次審査通過に認めます』の文字。
つまり。
「しゃあ!!これで二次審査進出ぅ!」
「総悟よくやった!!お前の書いた曲のおかげだな!!」
「何言ってんですかィ!!演奏したのは俺達3人でしょ!!3人のおかげでさァ!!」
良かった!!ほんとに良かった!!
まだ二次審査、決勝と道は長いけど、何よりもこの一年の努力が実ったことが嬉しい!!
「ほんともぅ……一時はどうなることかと思ってやした。」
「マジそれ。土方が欠点取るとはなぁ…。」
「いやお前もだろ!」
「追試で80ギリギリだったやつに言われたくありませーん。」
「ギン98点だったもんね。」
「俺頑張ったのー。夜中ガンガンにヘビメタ聴きながら頑張ったのー。それに比べてこいつは…」
「うっせぇ!!!」
『沖田総司』って書いとけばそもそも追試じゃなかったんだ!!とトシが弁解する。
どうやら日本史のテストで『総司』をうっかり『総悟』、と俺の名前を書いたらしい。
「確かにあれはややこしいでさァ。トシも『土方歳三』とちょっと似てるもんね。」
「俺は誰かいんのかなぁー。」
「ギンは『坂田金時』と似てやすよ。金太郎の。」
「現代の金太郎は鉞(まさかり)じゃなくてギターだな。」
「じゃあお前は刀の代わりにドラムスティック二刀流な!」
「まぁまぁ。……あと誰かいた気もするなぁ。誰だろ。」
「俺らのクラスで?」
「うん、誰だっけ……木の名前っぽかった。」
「ふーん。誰だろな。」
「全っ然わかんね。」
「まあ別にいいだろ。それより早く練習しようや。さっきからギターが俺を呼んでんだよ!!」
「へーへー。」
トシが軽く返事し、ドラムスティックをくるりと回した。(トシも早くやりたいらしい。)
俺もベース担ご。
「てかさ!!昨日ウィーチューブ(WeTube)見てたらクソかっけぇ奴がいてよ!!こう頭ブンブン振って…こう!」
「それ高校生がやってもかっこよくねぇだろ。」
「ほぼヘッドバンキング(ヘドバン)みたいでさ。ヘビメタ?」
なんか今日ギンのテンション高いなぁ…と思ってたら。
―――ピタッ。
「…………。」
「ギン?」
頭を上下に振ってたギンの動きが止まった。
見ると顔が赤い。
「ギン?大丈夫ですかィ?」
「…………ぁ。」
そう呟くと
――――ばったーん。
「「え。」」
ギンが倒れた。
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