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「!? へ、へぃ!!」
ビククッとお尻が持ち上がる程跳ね上がった。
どうしよう、一瞬寝てた!!
「早く前に来なさい。」
えーと、当てられた…んですよねィ?とにかく前に出ればいいのか?
問題を当てられてはなかったことに安心するも、何で前に来るよう言われたのか全く分からない。
黒板の右端には『平家物語』って書いてあるからそれ関連かな?
う……なんか皆の視線が痛い。目元が笑ってる。(『へぃ』などと江戸っ子口調が出たからだと思う。)
前には生徒用の椅子が一つ。
「はい、じゃあ椅子に跨がって。背もたれが前にくるように。」
言われた通り、普通の方向と逆の向きに座った。お腹に椅子の背もたれがくる状態。
「いいかー、椅子が馬だとして沖田が木曽義仲とする。」
もう一度言うが、木曽義仲っていうのはなぁ…と先生が説明を始める傍ら、何とかこの状況を理解する。
そうか、教科書の内容を再現してるんだ。(実際だとこの背もたれが馬の首ぐらいになるんだろうな。)
一先ず、居眠りしていたことはバレてなさそうで安心した。今進路指導部から何か言われたらたまったもんじゃない。
「…で、最期に木曽は顔面に矢が刺さり絶命する。ちなみに沖田、この体勢をなんて言うか知ってるか?」
「え?この体勢…?」
完全に当たらないと思って油断していた矢先の質問。
―…え、え、ちょっと待ってくだせェ。この体勢?馬に乗ってる……。
ぐるぐる頭を回転させて考える。寝起きだからかあんまり回ってくれない。
―…馬、馬、…………あ!
「乗馬……?」
先生を見上げてポツリと言ったが、先生は腕を組んで目を反らす。あ、違うのか。
「んー、微妙だな。先生的にはこう言って欲しかったんだけど。聞いたことないか?」
そう言って黒板にカカッと書いた文字。(先生的ってどういうことだ?)
「読めるか?」
「えー、えっと………。
『きじょうい』?」
「そうだな。『騎』に『乗』る『体位』で『騎乗位』。まぁテストには出さんが。」
へぇー、知らなかった。そんな言葉があるのか。
―…歌詞に使えないかな。語感いいし。
『――――』
―…ん?
メロディならこんなの合うかな…と脳内作曲をしていたら、ふいに機械っぽい音が微かに聞こえた。
―…気のせいかな?
先生は「足を引っかけるのが鞍馬で…」と説明を続けているし、皆も特に変わった様子はない。
「…ということだ。よし沖田、もう戻っていいぞ。ありがとな。」
促され、自分の席に戻る。
―…何だったんだろう?………まぁいいか。
その時俺は、再び作曲活動に取りかかったから気づかなかった。
トシと、いつの間にか起きてたギンが、俺には決して見せないような怖い顔をしていることに。
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