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放課後。それは部活のためにあるんでィ!by沖田総悟

「二人とも曲のほう練習してきやした?」

そう聞きながらマイクスタンドを前に立てる。

「やってきたのはやってきたけどよぉ、ギターソロ訳分からんからテキトーに弾いとくわ。あ、やべ4弦狂ってる。」

ギンがギターのチューニング(調律)をしながら呟く。

「トシは?………って、今聴いてんですかィ。」

「♪〜・〜〜・…〜(鼻歌)」

「ありゃ聞こえてねーだろな。」

「ですねィ。」

ドラムセットに囲まれてウォークマン聴いてるトシ。
まぁテスト勉強が忙しかったんだろうな。



もうお分かりのように、俺たち幼なじみ3人は「バンド」を組んでる。

ギターとコーラスがギン。
ドラムとコーラスがトシ。
そしてベースとボーカルが俺。

部活としては「軽音楽部」に入ってるけど、部員は俺たちしかいない。部員が増えない原因は多分、世間一般だと「軽音楽部」はあまり良いイメージを持たれていないからだと思う。("フリョウ"の溜まり場みたいな。)

部員はそれは勿論増えたら嬉しいが、顧問もいない部活でまとまりが保てるのかも分からない。

―…別にこの3人のままでいいんですがねィ。

もともと俺がバンドを組みたいって言い出したんだ。
小6の時にたまたまテレビでとあるバンドを見て、俺の人生は大きく変わった。(人生と言ってもまだ16だけど。)

何だか説明できないけど、"生きてる"って感じがして、すぐにベースと練習本を買ってひたすら弾いた。


「よく2人とも俺のわがままに付き合ってくれたな……」

「ん?総悟なんか言った?」

「ううん。何でもない。」

だから、2人にはとても感謝してる。

「チューニング完了っと…おい土方!おめーいつまで時間掛けてんだ!!」

「♪―〜……・―・…〜」

―…あ。

端から分かるほど一心に聴いてる。

これはギンにも共通することだが、こうやって音楽に真剣に向き合っている人は凄くカッコいい。

髪の毛から見えるウォークマンのコードや、目を閉じて小さくリズムを取っている身体。

―…カッコいいなあ…。

「なぁに見てんの?」

「わっ、ちょっとギン!」

視界が真っ暗だ。

「何すんでさ。」

「んーん。何かしたくなった。」

目にあてがわれたギンの手を掴む。あ、指先にマメできてる。

「だって総悟、ずーっと土方見てんだもん。」

「え?そんなに見てやした?」

「俺のことも見てくれよ〜。」

ずしっとギンが背中にもたれかかってくる。

「ギン重たいー。」

「俺おんぶされたら落ち着くの。」

「プッ。何ですかィそれ。」

「すまねぇ、今耳コピ終わっ……何してやがる。」

「あ、トシ終わりやした?」

ギンを軽くおんぶしていたら、トシがちょうど終わったらしい。

あれ、なんかトシの目付き悪いような…?(いつものことだけど。)

「おい、総悟から離れろ。」

「んなに怒んなよー。ほら、これ見せたるから。」

そう言ってギンがポケットから取り出したのは、一枚の紙だ。

ん?とトシと覗きこむ。
その紙に書いてあることが分かったとき、バッとギンを見上げた。

「え、これって…!」

「マジかよ坂田!」

「マジマジ。今年もやるんだとよ。"てっぺん祭"。」

キラリ、と目を光らせながらギンが見せてくれたのは、全国の軽音楽部で最も名誉ある大会、通称"てっぺん祭"の案内チラシ。

一年に一度、今最も熱い高校生バンドを決める全国規模のイベントだ。

去年、俺らが高1のときはまだこういう大会があることを知らなくて、知ったのは決勝大会が動画サイトにアップされたときだった。
動画は何回、ううん何十回も見た。

同じ高校生でここまで出来るんだと、初めて知った。

しかも、決勝大会は東京のプロが立つようなおっきいホール。

―…いつかあの舞台に立ちたい!

「で、で!!申し込みはいつまでなんですかィ!」

「一次審査のビデオ審査が締め切り1ヶ月後。」

「1ヶ月かぁ…。決勝は確か東京だよな?」

「やりやしょうよ!俺曲書きやすから!」

「そういうと思って、申込書も貰ってきた!」

「ナイスでさ!ね!トシもいいでしょう!」

「あったりめぇだろうが。この一年、てっぺん祭の為にやってきたようなもんだし。」

うわー!うわー!

「やっべ、テンション上がってきた!ちょ、今ギター早弾きしていい!?てかする!」

「俺もやる気でてきやした!東京行きやしょうぜ!」

「今日から筋トレしねーと…。」

わくわくとベースを肩に掛け、準備する。

あの舞台に立つため、今から練習しないと!

―…あ。


「あの、お二人さん。」

「「何(だ)?」」

「テストの点数は……?」

ヴィーンとスピーカーの音が目立つほど、空気が固まった。

さっき言ったように、「軽音楽部」はあまり印象が良くない。
だから、入部するときに進路指導部からきつく言われていたのだ。

『赤点取ったら活動停止。』

二人が見て分かるほど汗を浮かべる。

「あはは……。化学がちょっと…。」

「………あの漢字さえあってたら大丈夫だったのに。」

「………。」

「ご、ごめん総悟!!マジでごめん!!ほ、ほら!!追試で8割取ったら見逃してくれるって言ってたし!!」

「そ、そうだぜ!!だから、な!?そんな顔すん…「追試のために?練習時間削ると?」

ひぃいいと青ざめる二人。
今回ばかりはさすがに黙ってられない。
マイクを手に取り、大きく息を吸った。

「あれほど勉強してって言ったでしょうがぁああ!」

キィィイン―――。


「「………はい、申し訳ございませんでした。」」



こんなんで、てっぺん祭出れるのか………?

またもや頭を悩ませるのだった。


(はい、ちなみにこの状況を四字熟語で表しなせェ。)
(……順風満帆?)
(前途多難でさ!!)


続く



*****

そのへんに転がってそうなありがちネタの寄せ集め設定ですが、何とかやってきます。

ちなみに沖田と2人の身長差は20センチです。





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