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通信が、切れた。

坂田がそう言った。

エレベーターの機械音しか聞こえない中、ダァン!という鈍い音が響いた。

見れば、坂田がエレベーターの扉に拳を擦り合わせていた。

「…ちっくしょ…!あんのバカ野郎ぉっ!」

坂田の肩が震えている。

「最後までかっこつけてんじゃねぇよっ…!」

ダン、ダンと拳を扉に打ち突ける。


桂は俯いており、高杉は腕を組んでエレベーターの壁を見つめていた。

「大丈夫だ。」

なんの前触れもなく、声が聞こえた。
坂田が俺のほうに振り返る。

―…あぁ、今の声は自分だったのか。

勝手に口が開く。

「あいつ言ってたじゃねーか。ぜってー生きるって。」

確証なんてない。
でも。

「生きるよ。あいつなら。」


そんな気がした。


**********


その後、ナイトが言っていた家へ行った。

そこには、ナイトが言っていた通り、宅配便のカードやら物品リストがあった。
他にはたくさんの公務員試験、警察の問題集や参考書も。


うえ(上層部)に掛け合い、そのカードやリストに載っていた住所を全部回った。
外国の語学の壁は桂が急遽作った翻訳機で何とかなった。

現地の人に共通していたのは、無理矢理奪われた大切なものが日本から送られてきたこと。
差出人が分からないこと。
そして、現地の人は皆笑顔に満ちていたということだった。

現地の方々の証言を得て美術館の館長の逮捕状が取れ、めでたく逮捕。
なお、残っていたコレクションのほとんどは偽物だったらしい。


時雨のほうは…立ち入り調査には踏み込めなかった。
というのも、あのあとエレベーターが着いたのはビルの一階で地下にアジトがあるだなんて誰も信じてくれなかった。
念のため、エレベーターの下を捜索したが、あったのは冷たい床だけだった。

時雨のアジトへの‘道’は閉ざされ、このことは奇捜班の戯れ事として処理された。






**********


「お〜い!来年度の入班受け入れの件、何て書いた?」

坂田が奇捜班本部で声を上げた。

「あぁ、それなら例年通り、『希望者がいるなら』って書いて2週間前に提出しといた。」

高杉が答えた。

「…誰が希望するんだろうな、この変わり者の奇捜班を。」

桂が自嘲気味に笑う。

…やめてくれ、悲しくなんだろが。



月日が流れ、桜が芽吹く季節になった。
あれからナイトからの予告状は来ていない。
だから奇捜班も少し全体的に元気がなかった。


はぁ、とため息をつく。

みんな、本当は気にしているのだ。
口には出さないが。

と、そのとき、奇捜班本部のドアがノックされた。


桂がどうぞ、と言えば上司の松平が入ってきた。

「何かあったんですか?貴殿がここに直々にお出向きになるなんて……」


確かに、松平がここに来るなんて珍しい。てか今までなかった。(呼び出しはたいていアナウンス。)


桂が聞くと松平が顔をしかめた。

「いや、実はよ、奇捜班に入りてェって変わり者がいてな。」

「「「「は?」」」」

「いや俺も正直言って『は?』だけどさ、仕方ねーだろ希望してきたんだからぁ。ほら、入れ。」

松平の後ろから現れたのは。


「どーも。」



しばしの沈黙。

やばい、脳みそが固まっている。


かろうじて口から出てきた言葉は見事に4人全員重なった。


「「「「ヤラレタ…。」」」」




(完)






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