待ちぼうけは日常茶飯事
一緒に帰ろう、と大好きな彼から連絡を受けたのは一時間前。そして私は今、校門の前に立っていた。‥一時間も前から。
「‥おそいなぁ、」
ボソッと呟いた声はだれにも届くことなく消えた。私は彼をいつまでも待つ。大丈夫、彼は必ず来てくれる。きっと、今頃‥青い顔をして走っている。私を怒らせたと心配して。汗だくになってやってくるのだ。
「‥‥‥‥‥‥」
空は青色からオレンジになってきて、段々と不安が募る。
「‥‥‥ヨシ、タケ‥」
寂しさから呟いた言葉はだれにも届かない。なんだか惨めで涙がこぼれそうになった。
「愛!!」
遠くから待ち侘びた彼の声が聞こえた。私は顔を上げた。彼はどろだらけでこちらに走っていた。
「ヨシタケ!」
「ほんと、ごめん!」
肩で息をしながら私に謝罪をするヨシタケにタオルを差し出す。
「さんきゃ、ま、待たせてごめんな‥」
「それはいいけど‥どうしたの?どろだらけじゃん、」
「いやー‥アホな友達が、くしゃみしたと同時にチャリごと溝にすっぽり嵌まりやがって‥」
「‥よ、良くわからないけど大変だったんだね」
ヨシタケは私の顔を見てニカッと笑った。
「ほんっとよかった。愛想尽かされて帰ってたらどうしようかと思ってたから。」
待たせてごめん。それと待っててくれてありがとう。そういってヨシタケは泥だらけの手で私の頭を撫でた。頭に泥がついたけど、これはヨシタケが必死に友達を助けた証。だから、嫌じゃない。私はこんなヨシタケの手が好きだ。