はじめての××
ヨシタケと私は今、駅ビルを歩いていた。なんて幸せなんだ。ヨシタケが友達より私を優先してくれるなんて。私は先程から緩む頬を抑えられなかった。
「今日はやけに楽しそうだな。なにかいいことでもあったのか?」
「わかっちゃった?」
「そんなに上機嫌なんだからわかるに決まってんだろ?」
ヨシタケは半ば呆れたように笑った。そんな顔ですら愛しいと思う私はきっと自分で思ってる以上にヨシタケがだいすきなんだ。
「お、このストラップ‥かわいいな」
ヨシタケの言葉に私は現実に引き戻される。そしてヨシタケの手元にある白と黒の二つで対になるストラップを見た。
「ほんとだ、デザインがシンプルでかわいいね」
「‥‥‥じゃ、じゃあさ‥」
「うん?」
「か、買わねえ?ちょうど二つあるし」
「!‥うん!買おう!」
私がそういうとヨシタケは安心したように息をついてレジに向かった。ヨシタケは遠慮したけれどお揃いのものなのだからと私も半分お金を出し、会計を済ませた。レジのお姉さんが来る前に決めとけよと嫌そうな顔をしていたのはご愛嬌。
早速、袋から二つのストラップを取り出した。
「愛は白と黒、どっちがいい?」
「うーん‥黒!」
「黒?黒でいいのか?白が好きって前に言ってたろ?」
「いいの!私が黒でヨシタケは白!」
「ま、愛がそれでいいならいいけどよ」
不思議そうな顔をするヨシタケ。確かに、私は白が好きだ。でも、私が白を持つには少し眩しすぎる。私は黒くらいがちょうどいいのだ。
携帯の端で揺れる黒いストラップを見て、私は満足げに笑った。