6月の湿った風が肌を撫でる。不快感を感じながらも朝から騒がしい廊下を歩き、自分の教室を目指す。どのクラスからも喧嘩の罵声が絶えない。あるクラスからは楽器の音が聞こえたかと思ったら次に爆発音が鳴ったり、教室の中にサークルが出来て人がバラバラになっていたり相変わらずこの学校は物騒だ。私はそんな喧騒を無視し、自分のクラスの3−Dの教室の扉に手を掛けて開ける。


「おは、」


ヒュッと私の頬をなにかが掠める。そしてピリッと頬に小さな痛みが走った。


「‥‥‥‥‥」


顔から血の気が引いた。口をパクパクと開けて声にならない声を出していると‥


「ん?ああ、悪ィ。当たっちまったか?」


私の目の前で床に崩れ落ちる男子生徒。その奥で悪魔のように笑うのは我がクラスきっての問題児‥ユースタス・"キャプテン"・キッド。

私は恐る恐る後ろを振り返り、先程、私の頬を掠めたものを見る。それは見事に壁に突き刺さったコンパスだった。


「あぶな!」

「相変わらずとろいな」

「だれのせいだと‥」


キッドに文句のひとつでも言ってやろうと私は床に倒れてる男子生徒を乗り越え、キッドがいる窓際の席まで来た。


「キッド、あんたねえ‥」

「危ないだろう、キッド。」


そんな私の言葉を遮り、キッドの前に立つキラー。キラーはキッドと仲が良い比較的常識人。私は出鼻をくじかれて少し不服だったけれど、キラーならば致し方ない。


「大丈夫か?ウミ。」

「え?あ‥うん、平気だけど」


私がそう答えるとキラーは私の頬に手を伸ばした。


「血が出てる、保健室行くぞ」


キラーに手を引かれて、教室に着いて早々‥教室を退出した。




コンパス飛び交う教室で





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