モトハルからもらった料理本を見ながらなにを作ろう、と悩んでいる私の前に誰かが立ちはだかった。私はゆっくりと顔を上げる。 「‥貴様だったのか、」 「愛‥」 そこにいたのはポテト大好き幸薄主人公のタダクニ。私は本を閉じてタダクニと向かい合う 「タダクニ‥誰がなんと言おうと私はお前を倒してその道の先に進む‥!」 「なんでだよ!なんで俺と愛が敵対してんの!?え、ちょ、待って、俺は‥って、いたい!なんで殴んの!?」 「がら空きだったんで。」 「そんな理由で殴んなよ!」 タダクニを殴るとすぐに崩れ落ちた。全く‥軟弱な奴め。私はタダクニの横を通りすぎようとすると強く手を握られた。 「委員長‥いや、愛!」 「え、委員長?誰?」 「来て!」 タダクニは急に走り出した。腕を捕まれている私は必然的にタダクニと一緒に走る形になっている。 「ちょ、タ、タダクニ!なに!?」 「いいから来て!」 「ま‥私、体力無い‥っ!」 タダクニは私の言葉を無視してそのまま走る。息も切れ、足もガクガクするし、今何処を走っているのかもわからない。いい加減、倒れそうになると‥タダクニがようやく足を止めた。 「ぐふっ‥も、もう駄目じゃ‥た、タダクニ‥後は頼んだ‥」 肩で息をしながらタダクニに言うと、タダクニは振り返って私に告げた。 「この景色を‥見せたかったんだ。」 そういうタダクニの背後から見える景色に私は思わず息を飲んだ。夕暮れがはっきり見える小高い丘。木々や、町並みがオレンジ色に染まってとても綺麗だ。 「‥おおっ‥」 「あー‥その、誕生日‥おめでとう」 「‥ありがとう。タダクニ、」 私は笑顔でタダクニにお礼を言う。 「や、やめろよ‥照れんだろ」 「タダクニってただの影薄くて可哀相で不憫でツッコミしか出来ない主人公かと思ってたけど‥案外、そうでもないんだね。」 「余計なお世話だよ!!」 帰り道、六番目のおめでとうは 影が薄い不憫主人公タダクニからの とっておきの景色だった。 |