ぼくらは愛妻家 | ナノ





 
カーテンから漏れる朝の眩しい日差しに眉を寄せる。その光を遮る為に俺は腕で顔を覆った。その時、寝室の扉が開く音がした。

「あ、まだ寝てる。」

聞き慣れた愛しい声に口元が緩む。声の主はベッドに座り、俺の腕をポンポンと叩く。

「としゆき、朝だよ。」

そして俺を呼ぶ優しい声。開いている扉の向こうから食欲をそそられる臭いがした。俺は腕を退けて目を開き、声の主を見た。

「あ、起きた。」

「おはよう、愛。」

「うん。おはよう、としゆき。」

エプロンを着けて微笑む彼女は俺の奥さんだ。‥なんか、自分で言うと妙に照れ臭いな。

「ご飯出来てるよ」

「ああ、今行く」

体を起こしてベッドから立ち上がる。先にリビングへ向かった彼女の後に続いて寝室を出た。椅子に座って机の上に並べられた食事に手を伸ばした時に、あることを思い付いた。

「‥愛、」

「んー?なにー?」

キッチンから麦茶を持って現れた彼女に手招きをする。不思議そうな顔をして近付いた彼女の手を引き、キスをした。

「!?」

「おはようのキス、忘れてた。」

「あ‥朝からなにを‥!」

「朝だからこそ、だろう?おはようのキスは。」

したり顔で彼女に笑いかける。彼女は俺が朝からキスをするだなんて思いもしてなかったのだろう。突然のキスに顔を真っ赤にしている。

「い、いつもはそんなことしないくせに‥!」

「いつもしていいならするが」

「だ、だめ!」

「そうか」

「い‥いいから朝ごはん食べなさい!朝ご飯が冷めちゃうでしょ!」

「ああ、そうだな。」

そういってキッチンに入って行ってしまった彼女の背中を見送り、上機嫌で食事をとる。

「愛こそ、朝ご飯を食べなくていいのか?冷めるぞ?」

「後でいい!」

キッチンから聞こえた声に苦笑する。いつまで照れているのやら‥だが、まあ‥たまにはこんな朝もいいな。そう思いながら、どうやって照れている彼女をキッチンから出そうか、そんなことを考えていた。


「そうか‥残念だな。俺は愛と一緒に朝ご飯が食べたいんだが。」


だが、俺のこの言葉により‥柱から顔を覗かせていた彼女の頬がさらに赤くなって再びキッチンの奥へと引っ込んでしまったのを俺はただ見ていた。

(‥逆効果だったか、)



―――――――

朝からなにやってんだお前ら

たまには唐沢さんおもっきしデレデレにさせたい病が発症した。後悔はしていない。






「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -