一呼吸して、私は幼馴染の家のチャイムを鳴らす。


「ヒーデノーリくーん!」


私の手にはヒデノリの鞄。やっさんから逃げた時にそのまま河原に置き忘れていたのだ。幼馴染ということもあり、私はヒデノリの家に届けに来る

報告したいこともあるし、


「‥‥なんだよ、」

「‥随分とゲッソリしてるね。あのあと、どうしたの?」

「思い出させるな‥」

「はい、鞄。忘れてたでしょ」

「サンキュー」


扉が開き、中から出て来たヒデノリは河原で会った時よりもゲッソリしていた。そんなテンションが低いヒデノリと違って、私のテンションは高い。


「お邪魔していい?」

「‥‥まあ、」

「わーい。お邪魔しまーす!」


私はヒデノリの家に上がり、家の中でゴルフクラブをフルスイングするお父さんと、ポケットから女物のパンツがはみ出てるユウスケさんに挨拶して、ヒデノリの部屋に向かった


「なんかあったのか?」

「うん!ご存知の通り、私はヒーローがだいすきで会いたいって15年間、神社で願い続けてた」

「初耳だよ」

「そして、今日‥夢が叶ったの」

「‥とうとう頭がイカれたか。可哀相に」

「私は本当に会ったのよ!」

「‥‥‥‥‥‥」

「あの神社で!ヒデノリだって小学生の頃、ヒーローに会ったんでしょ?私も会ったの!」

「あの人に会ったのか!?」

「その人かどうかは知らないけど私はヒーローに会ったの!」

「マジ!?誰々?」

「それはダメ、ヒーローは民間人に正体を知られてはいけないの」

「いいだろ。別に言いふらしたりしねえから」

「ダメ!私はヒーローと秘密にするって約束したんだから!」


私はヒデノリにビンタをして、私とヒーローの出会いを熱く語る。ヒデノリは最初、どうでもよさ気に聞いていたけれど、段々と表情を青くしていった


「パッヘルベルのカノンを吹いて颯爽と現れたヒーロー‥カッコよかったな、それで金髪が夕焼けに反射してキラキラ輝いてて‥ヒーローはああでなくちゃね!」

「‥‥‥‥‥」

「‥どうしたの?ヒデノリ、」

「い、いや‥なんでも」


私は今日出会ったヒーローを思い出して呟いた。


「はあ‥また逢いたいなぁ‥」


ヒデノリはただ、なにも言わずに口元を引き攣らせて笑っているだけだった。





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