夏の風が汗ばんだ肌を優しく包み込む。人気のいない神社は、まるで世界から切り取られた一つの空間のようだった。 チャリン、と音をたてて賽銭箱の中に消える私のお金。 そして私の幼い頃から、ずっと願い続けてきた夢を今日もまた神様に願う。 誰にも言ったことのない‥私のささやかな夢。願い続けていれば、いつかきっと叶う‥私はそう信じているのだ。 「今日こそ‥私の、」 私が願い事を呟いた時、背後からパッヘルベルのカノンの音色が聞こえた。しかし、これはただのパッヘルベルのカノンではない‥口笛でこの曲を奏でている。 (す、凄い‥!この完璧な音色!この口笛の主は一体‥) 私は後ろを振り返る。そこに立っていたのは輪ゴムを指で飛ばしながら頭にヒーローのお面をつけた金髪の青少年だった。 「!!」 私は彼を見た瞬間、衝撃が走る。彼は私に気付くとハッと顔を赤らめ、慌てたように頭につけたお面を外して口笛を吹くのを止めた。 それに私は確信する。 早足で彼の元へ歩いて行った。彼は不思議そうな顔をしているけれど、私は誤魔化せない カツカツ‥ 「え、え?な、なに?」 「‥‥‥見付けた。」 「は?」 「私のヒーロー!」 苦節15年。今日、私は幼い頃からこの神社で願い続けた夢‥ヒーローを見付けることが出来ました PREV NEXT |