夕暮れに染まる影と戸惑い
会議も終わり、各々が帰路に着く。
俺は欲しい物があったため、
家ではなく、駅前に向かった。
「‥よし、帰るか。」
欲しい物を購入し、踵を返す。
だが、俺は帰ろうとする足を止めた
「‥‥‥会長姉さん?」
俺の視線の先には困ったように店内を見回す会長姉さんの姿。俺は再び、店内へと足を踏み入れた
「困ったな‥」
「会長姉さん」
「あ、か‥唐沢くん、こんにちは」
「こんにちは。奇遇ですね」
「唐沢くんもお買い物?」
会長姉さんは俺を見付けると、その表情を明るくした。こんな些細なことで喜ぶ俺はきっと単純なのだろう
会長姉さんの手には小さなメモ。
「実は‥買い物頼まれたんだけど、私があっちにいる間に置いてある場所が変わってるみたいで‥」
「見せてくれませんか?」
「はい、」
「ああ‥これならあっちですね。さあ、行きましょうか」
「え?」
「案内しますよ。」
俺はメモを手に持ったまま、歩き出す。会長姉さんはしばらく呆けていたがすぐに慌てて俺の隣に駆けてきた
「唐沢くん、買い物は?」
「俺の買い物はもう済みました」
「‥いいの?」
「はい」
「ごめんね、唐沢くん。ダメね。私ったら‥しばらくこっちに帰ってこないものだから‥店内の様子とかについていけないみたい」
「仕方ありませんよ」
困ったように眉尻を下げて笑う顔がとても会長に似ていた。姉弟だから当然と言えば当然なのだが
「ありがとう、唐沢くん。助かったわ」
「いえ、俺が好きでしたことなので」
「‥唐沢くんは優しいわね。年下の子に助けてもらうなんて‥本当にダメね」
ズキンと胸が痛んだ。
会長姉さんが言っだ年下゙という言葉がやけに耳に残って離れない。
「ありがとう。荷物持ってもらった上に家まで送ってくれて」
「いえ、」
「そういえば唐沢君は弟と一緒に生徒会をしてるんでしょう?あの子、迷惑かけてない?」
「もちろんです。逆に会長にはよくしてもらってます」
「ほんと?それならいいんだけど‥」
会話をしながらも俺は先程の会長姉さんの言葉が離れなくて、ずっと考えていた
やはり、年下は嫌なのだろうか。
確かに俺は会長姉さんの弟の会長より年下だ。だが、恋愛に年の差なんて関係ない‥と俺は思っていても会長姉さんはそう思っているかどうかわからない。
そもそも、会長姉さんの目に俺がどう映っているのかもわからない。
「それでその時、あの子ったら‥」
会長のことを話しながら楽しそうに笑う会長姉さんの笑顔を見て俺はモヤモヤする思いを振り払うように帽子を目深に被り、笑い声をあげる会長姉さんに相槌をうちながら隣を歩いた‥