「大丈夫っスか、タダクニさん!」
バン!と大きな音を立てて俺の部屋の扉が壊れそうな勢いで開いた
「‥‥‥お前か」
「死なないでください!私、こんな若いうちに未亡人なんてイヤです!」
「結婚どころか俺達、付き合ってもいねえだろ」
「じゃあ付き合ってください!ゆくゆくは結婚してください!」
「しねえよ」
「わぁああ!意地悪!焦らし上手!好き!」
「悪口じゃねえし‥」
ベッドの上で寝てる俺に縋り付き、泣きわめく妹の友達を見た。コイツの名前は愛。
妹に連れられて、家に来た時偶然会った俺に一目惚れとやらをしたらしく、それ以来こうしたワケわからんアプローチを受けている
「なんで連絡くれないんすか!風邪ひいてるんでしょ?心配したじゃないですか!」
「!」
泣きそうになりながら必死に言ってくる愛を見て、少しときめいた。
(コイツ‥本当に俺のこと心配してくれたんだな‥)
「めーちゃんから聞かなきゃ、私、ずっと知らないままでしたよ!タダクニさんが苦しんでるのに私はのほほんとしてたなんて‥!自分が情けないです!」
「いいって、心配してくれてありがとな。うれし‥」
「めーちゃんに聞かなきゃこんな美味しいフラグを危うく逃すとこでしたよ!看病って凄まじいフラグなのに!ここでタダクニさんに私の良さをアピールして惚れてもらう絶好のチャンスじゃないですか!!」
「‥‥もう帰れお前‥」
「あ、お腹空いてません?お粥作りますよ!というワケで台所お借りしますね!」
「ちょ、待てって!」
だが、既に愛はタダクニの部屋を出た後だった。
「‥ったく‥ま、腹減ってたけどさ」
「お待たせしました!」
数十分後に愛はお粥を持ってきた。美味そうなにおいがする。
「さ、さんきゅ」
「いえいえ!タダクニさんのためですから!さあ、口を開けてください。あーん」
「しねえよっ!お椀寄越せって!」
「ダメです。食べたかったらあーんが必須です。苦情は受け付けません」
「なんでだよ!」
「ほらほら、早くあーんして下さい」
「絶対イヤだっ!」
「もう!タダクニさん、ワガママ言わないでくださいよ!」
「俺のセリフだよ!」
愛は仕方なさそうに俺にお椀を渡した。悔しいが美味しそうだ。
「いただきます」
「どうぞ召し上がれ!」
「‥‥‥‥」
「‥ど、どうですか‥?」
「‥‥美味い!」
「ほんとですか!?やったあ!」
「ああ、本当に美味いよ」
「よかった‥タダクニさんに喜んで貰えて。あ、まだまだお代わりたくさんあるんで遠慮なく言ってくださいね」
「ありがとな」
「いえ、タダクニさんに早く元気になってほしいですから」
「!‥そ‥そうか、じゃあ早速で悪いんだけどお代わりしていいか?」
「はい!」
愛は立ち上がり、台所に行った。そして愛が戻ってきた時‥俺は衝撃を受けた
「‥‥‥なにそれ‥?」
「お鍋です」
「いや、見ればわかるけど‥」
「タダクニさんに早く元気になってほしいんでカレー用の鍋でたくさん作りました!いっぱい食べてくださいね!」
カレーなどで使う巨大な鍋を持ちながら満面の笑みを浮かべる愛に俺はなにも言えなくなった――‥
「う‥うぷっ、‥」
(おえっ‥もう何杯目だ‥?)
タダクニは限界を迎えていた。だが、とても嬉しそうな笑顔で俺を見る愛を見ていると止まりそうになる手がまた動く
「‥‥‥ご‥ちそ‥さま‥」
「わあ!完食です!たくさん食べましたねタダクニさん!作った甲斐がありました!お粗末様です」
「も、う限界‥だ‥」
「ごめんなさい、次からはちょっと量考えて作りますね!」
「‥‥‥そうしてくれ‥」
「‥でも、こんなにたくさんあったのに‥完食してくれてありがとうございました。私がタダクニさんを惚れさせる予定が、私がさらにタダクニさんのこと‥好きになっちゃいました。」
「!!‥な、なんだよいきなり」
「これ以上好きにさせないでください。困っちゃいます」
困ったように笑う愛に見惚れてたのは絶対に言ってやらん
いっぱい食べるキミが好き!
(あとがき)
初タダクニ夢です!
これはタダクニですよ!
シリーズ三作品目はどうやら主人公のタダクニになりました
なんだかんだタダクニも
ヒロインちゃんが嫌いじゃないです
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました