学校の通学路にあるコンビニに寄るのが私の朝の日課。一直線におにぎりが陳列してある棚に行き、財布の中身を確認する。ほぼスカスカの財布を見て溜息をつき、そして羨むように鮭おにぎりを目に映した後、諦めていつものようにシーチキンを一つ手に取る
「105円のおにぎり一つしか買えないなんて‥ほんと貧乏、」
ボソッと呟いた声は誰にも聞こえることなく消えていった。私はレジに行く。
「105円になります」
いつものように105円のおにぎり一つをペンギンと書かれた帽子を被るお兄さんがいるレジに差し出す。お兄さんはいつものように淡々とレジをする。
「これで‥、」
「5円のお返しになります」
私が110円を出せばお兄さんは手早くお釣りを私にくれる。会釈をして私は学校に行く。これがいつもの私の朝の光景
「明日は鮭おにぎり買えるかな‥」
登校しながらボンヤリと明日の昼食のおにぎりについて考えていた。私の一番好きな鮭おにぎり、だが値段は136円‥シーチキンより31円も高い
「毎日、鮭おにぎりなんて買ってたら破産する‥」
なので私はお手軽価格なシーチキンを毎日購入している。というか鮭でなくてもいいからお腹いっぱいになるまでおにぎりが食べたい。
「一つじゃ足りねえっての!!」
しかし、現実はそう甘くない。毎日一つが限界なのに二つなんて夢のまた夢だ。
「‥なんでこんな貧乏なんだろ‥バイト始めようかな‥そうすればおにぎりいっぱい食べれる‥」
真剣にバイトを始めるか悩み始めた時に私はふと思った。
「あのペンギン帽子のお兄さんに‥シーチキン大好きな子として見られてたらやだな‥恥ずかしいし、毎日毎日飽きもせずシーチキンばっか買ってるよコイツみたいに思われてたらどうしよう‥!」
毎朝いる店員のお兄さん。いつも無表情だからなにを考えているのかわからない。けどもしこんな風に思われたら嫌だな、と思った
「明日は奮発して鮭にしよう‥」
「いらっしゃいませ。」
翌日の朝、私はいつもと同じようにおにぎりの棚に行く。だが、ここからはいつもと違う‥はずだった、
(鮭おにぎりねえし!!)
おにぎりの棚のどこを探しても鮭のおにぎりが見付からない。今日に限って売り切れのようだ
「結局‥シーチキン、か」
見慣れた青色のシールが貼られたシーチキンのおにぎりを持ち、溜息をついた。
「これください」
「105円になります。」
「これで、」
ペンギン帽子のお兄さんはたった一つのおにぎりをご丁寧に袋に詰めた。だが、制服のポケットからなにかを取り出し‥
「え?」
「5円のお返しになります」
「え、ちょ‥、」
お兄さんはポケットからおにぎりを取り出した。そして手早く袋に詰める
「あ、あの‥っ!」
「ありがとうございました。またのお越しを。」
そういってお兄さんは私に袋を差し出し、笑った。それに思わず胸が高鳴る
突然の出来事に頭が追いつかないがとりあえず私はお兄さんにお礼をいった
「え‥えと、あ、ありがとう、ございます‥!」
お辞儀をして私は店を飛び出した。そして袋の中身を見る。
「‥メモ?」
袋の中には綺麗に包装されたシーチキンのおにぎりとラップに巻かれたおにぎりの他に、小さなメモが入っていた。
『おにぎり一つでは足りないだろうし‥いつも鮭を見ていただろう?鮭が好きなのかと思って鮭おにぎりにしたが、嫌いなら捨てて構わない。 ペンギン』
「!‥ペンギンさんっていうんだ」
綺麗な字で書かれたメモを見てあのお兄さんの名前を知る。それに、私がいつも鮭おにぎりを見ていたことをお兄さんは気付いてたんだ‥
「‥‥お昼が楽しみ、かも‥」
袋の中に入ったおにぎりを見て微笑み‥いつもと違う朝の光景、そして先程からドキドキと高鳴る胸の鼓動を感じながら私は駆け出した―‥
いつもと違う朝と恋の予感
(明日の朝が楽しみ!)
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