私は一人、河原にいた。
右手には真っ暗の暗黒物質

「‥‥なにがバレンタインよ」

ポツリと恨み言を呟く。
今日は女子の祭典‥バレンタインデー。数多の女子が想いを寄せる男子のために腕を振るう日。ここにいる愛もその一人だった

しかし、出来たのはこの暗黒物質

「‥こんなの貰ったら、毒殺する気か?とか言われそうだな」

妙にロマンチストなくせに、気になったことは例え女子でも容赦なく口にする幼なじみのヒデノリ

昔から好きで、毎年毎年この日はどれ程、チョコを暗黒物質へと変えてきたのだろう。結局、諦めて市販のチョコにシフトチェンジするのは最早パターン化している

「今年こそは、と意気込んだ結果がコレだよ!!!」

誰もいない河原に愛の声が響く

手元の暗黒物質を見る。不格好で禍々しいオーラを放ってる

ココアというにはかなり厳しい
クッキーだったのだが、ただの炭になっている。

「こんなのあげたら嫌われる‥捨てよ、」

私は立ち上がり、暗黒物質という名の消し炭クッキーを持った右手を振りかぶった

(さよなら、私の努力の結晶‥!)

瞬間‥ガシッ、と誰かに腕を強く掴まれた。私は慌てて振り返る

「誰よ!?」

「はぁ‥はぁ、ま、間に合った‥」

「ヒ、ヒデノリ!?」

私の腕を掴んでいたのはヒデノリだった。息がきれてるということは走って来たのだろう

「な‥なんで‥此処にいんのよ」

「誰かさんからのチョコ、待ってたのに‥いつまで経っても来ねえから探してたんだよ」

「残念ね。私、今年は誰にもチョコを送る気なんてないわ」

「じゃあ‥お前、それなに?」

「‥‥‥暗黒物質。化学の実験で錬成したの」

「せっかく錬成したのに捨てるのか?」

「特殊危険物に指定されてるから捨てる。」

「バッカ、お前‥んなの川に捨てたら川が暗黒物質化するだろ。貸せ、俺が処理する」

「死にたいの」

「死ぬかバカ。エンターテイナーヒデノリを舐めるなよ。どんな暗黒物質だろうと俺は必ずこの暗黒物質を処理してみせる」

そういうとヒデノリは袋から消し炭クッキーを取り出し、迷いなく口に運んだ

「あーあ、まだ若い身空なのに」

「‥‥‥‥‥‥‥、‥」

ヒデノリの顔色が緑になったり、オレンジになったりと様々な変化を起こしている。自分で作っておきながら愛はその威力に震撼した

「‥‥今日は風が泣いているな」

「なに言ってんのあんた」

「中々だぞ。このココアクッキー」

「普通のプレーンだけど。」

「そうかそうか。すまん、消し炭クッキーだったか。斬新だな」

「もういいよ!」

「凄いな‥プレーンクッキーの材料から暗黒物質を錬成しやがった!」

「私は錬金術師の才能があるのよ」

「料理の腕前は超初心者だが錬金術師としての実力は国家錬金術師クラスだぞ、愛」

「そうよ、私は国家錬金術師の資格を持ってるの。ただし、鋼じゃなくて暗黒物質のだけど」

「‥‥‥‥来年、」

「?」

「来年はトリュフが食いたい」

「‥また錬成するわよ」

「上達しろ」

「わかった。殺傷能力高めとく」

「味の話なんだけど」



真っ黒焦げの愛情
(来年こそは、きっと)






(あとがき)
すいませんギャグ甘かなコレ
もっと糖分入れるつもりだったのに路線が脱線したようです

バレンタイン企画第一弾!
そして驚いたことにヒデノリ夢‥これが初めてです

ヒデノリ好きなんですよ
ただネタがなかったんです

ていうかヒデノリ甘いの
嫌いだった^p^
手遅れでしたすいませんw

(02/14)
修正(03/07)

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