うそつき姫を許しましょう


 
「だいっきらい!」

「‥‥‥‥‥」

「きらい、どんだけきらいかっていうと能力者が海楼石を嫌うくらいきらい!」


午前11時48分、キラーの部屋では奇妙な光景が広がっている。ベッドに座るキラーの目の前に立って失礼な言葉をぶつけるのはウミ。


「‥‥なんなんだ?」

「私はキラーがきらいなの」

「そうか。」

「きらいきらい、だーいっきらい」

「ああ、そうだな。」

「‥‥‥‥‥」


キラーは立ち上がり、目の前でぎゃあぎゃあ騒ぐウミの頭を撫でる。それに対してウミは不満げにキラーを見て反論する


「なによ、なんで余裕なの!」

「そうだな。」

「きらい宣言してるんだけど!」

「ああ、わかってる」

「なんでへこたれないの!」

「傷付いてもないからな」

「なっ‥、」


顔を真っ赤にし、怒りの表情を浮かべるウミをあしらいながら時計を見た。

今の時間はちょうど12時。

俺は腕を振り上げてるウミの腕を掴んで引き寄せた。


「キラーのバカ!だいきら‥いっ!?」

「おれは、ウミが好きだがな。」

「!?」


ウミの耳元でそう囁く。そして手を離し、おれは自室から出てった。


「昼飯の時間だな。じゃあ、おれは先に食堂行ってるぞ。ウミも早く来い、」

「な‥ななっ‥!?」


部屋に残されたウミは顔が茹蛸のようになっていたが、しばらくすると赤かった顔が青く染まっていく。


「う、うそ‥っ、ヤバい‥かも!」


今日の日付は4月1日。
世に言う‥エイプリルフールだ。

先程のウミのきらい発言は、キラーにきらいと告げて、キラーがへこんだところに実は嘘でした!と報告しようという計画だったのだ。

だが、先程‥キラーはウミに好きだ。と耳元で囁いた。

これが今日以外なら飛び跳ねて喜ぶところなのだろうが‥如何せん、今日は年に一度のエイプリルフール。嘘をついても許される日‥つまり、好きは嘘‥


「‥てことは‥き、嫌い‥って解釈するんだよねコレ‥?」


床に倒れ込み、ブツブツと独り言を続けるウミ。


「は‥はは、舐めるなよ‥ロマンチック乙女ゲージ満タンな私の素敵解釈だとそれは意地でも本当の好きって解釈するように持っていくぞ‥っ!」


引き攣った笑みを浮かべながらも目は朦朧としている。いくら待っても来ないウミを心配したのか、部屋にキラーが戻ってきた


「ウミ?昼飯だから食堂に来いと‥」

「‥‥うわあああん!ごめんなさいい!私が悪かったから!だから、だから嫌いにならないでよキラー!!」

「‥‥‥‥お前、」


ウミはキラーの足元にへばり付いて先程の発言を謝る。キラーはしばらく呆然としていたがハッと我に帰り、しゃがみ‥ウミと視線を合わせる


「ウミ‥今日がなんの日かわかるか」

「え、エイプリルフール‥」

「ああ、そうだ。そのエイプリルフールだが‥お前は知らないようだから言っておこう」

「なにを‥」


キラーは涙でグシャグシャのウミの顔を傍に置いてあるタオルで拭いてやる。


「エイプリルフールはな、」

「‥‥‥‥」


「午前までなんだ。」


「‥ご、ぜん?」

「そうだ。おれが先程、ウミに言った言葉‥あれは12時を過ぎた後に言ったんだ、ほら‥鼻かめ」


キラーはウミの鼻にティッシュをあてる。おとなしくチーン、と鼻をかむウミをキラーは優しく見詰めた


「だから、エイプリルフールはもう終わりだ。」

「‥もう嘘ついちゃダメってこと?」

「ああ。」

「じゃあ‥キラーが言ったあの言葉はほんと‥なの?」

「おれの本心だ」

「‥‥‥‥きらい、」

「ウミ?」

「私がさっきから言ってた‥きらいっていうの‥嘘だから‥!」

「ああ、知ってる。だから、おれは傷付きもへこみもしなかったんだ」


キラーは軽く笑ってマスクをずらし、未だ床に座るウミにキスを落とした。



うそつき姫を許しましょう
(許した後はその唇に口づけを、)



‐‐‐‐‐‐

エイプリルフールネタなのに
過ぎててすいません‥

(4/5)






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