壊滅的でも幸せなの


 
「カッコイイよ!」


おれの帽子を見て目を輝かせながらウミは言った。


「‥そうか、」

「うん!ペンギンの帽子、すっごくオサレ!かわいいよ!」

「オサレじゃない、オシャレだ」


正直、褒められているというのに‥おれはあまり嬉しくはなかった。何故ならおれの目の前にいるウミは、一般女子が大好きなオシャレなどに無頓着かつ、センスが壊滅的に悪いからだ


「帽子で自己紹介とかハンパないよペンギン!最先端!」

「おれにそんなつもりないがな」


頭に出目金のような魚が血まみれで断末魔をあげている凄まじいセンスの帽子を被っているウミは自分の帽子と交換してくれ!と目で訴えかけてきている

ウミには悪いが、絶対にイヤだ


「また今度、な」

「え〜」

「キャスケットの帽子はどうだ」

「やだ、ダサい」

「‥‥‥‥」


やはりコイツの美的感覚がわからん。おれの周りをグルグルと回って帽子を見るウミ。とてもかわいいと思う‥帽子以外は、

この船の船員が全員、同じ服を着るという船でよかった。ウミの私服を見た時はそれはそれは衝撃的だった。それと同時にウミに好意を寄せていた船員のハートも大多数割れた。

おれは割れた奴らを哀れみ、そしてその程度の気持ちだったと思った。実質、おれはウミの私服を見て驚きはしたが、おれのウミへの気持ちは揺るがない。


「ほしい!どこで買ったの?」

「前寄った時の島だ」

「次の島にもあるかなぁ?」

「どうだろうな」

「それ、スペアないの?」

「今の帽子じゃ、イヤなのか?」

「イヤじゃないよ?かわいいでしょ!大人気の絶叫出目金シリーズの最新作!交換してあげてもいいよ?」


要らん、と言おうとする口を慌てて閉ざした。


「そうか‥ウミ、そんなにお前にとってこの帽子がかわいいのか?」

「うん!かわいいよ!」

「‥‥‥‥‥‥」

「かわいいのもあるけど〜‥やっぱり、ペンギンが被ってるからかな!」

「は?」

「被らして!大丈夫、そのまま強奪なんてしないから!」

「‥ほら、」


おれが帽子を渡すとウミはすぐ被って嬉しそうに笑った。


「えへへ、ペンギンとお揃い!」

「!‥そうか。」


今、ウミが被っててお揃いではないと思ったが、あまりにもウミが嬉しそうに笑うものだから、なにも言わずにおれも笑った。


「ほしがった理由はね、かわいいから!もあるだけど‥なにより、ペンギンとお揃いだから!」

「帽子は一つしかないぞ?」

「でも、これにはペンギンって書いてあるでしょ?そんで、ペンギンはペンギンだからお揃いなんだよ!」

「‥ああ、そうだな。」


どんなに服のセンスや美的感覚がずれていようと、やっぱりおれは目の前にいるウミが好きだ。


「だが、ちゃんとお互いが持てるお揃いがほしいと思わないか?」

「持ちたい!」

「次の島で一緒に買おう。」


おれがそういうとウミは頬を染めて笑った。おれも嬉しくて笑ったのだが‥忘れていた


「ペンギーン!この人食いマンティコラの指輪かわいいよ!こ、これにする?指輪でお揃いはまだ早いかな?」

「‥‥‥‥」

そう。忘れていたのだ。ウミの壊滅的なまでのセンスの悪さを―‥



壊滅的でも幸せなの
(キミと買い物は自殺行為)



‐‐‐‐‐‐

ヒロインちゃんダサくしてしまって申し訳ありません

マンティコラの指輪ってなんなの

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