じゃあな、



悲恋チックどころか
がっつり悲恋です。



ジクジク

擬音って便利だよな。簡単に自分が今思っていることをなあなあでも伝えられるんだぜ。ズキズキ、とか‥イライラとか。こんな言葉でも俺が今どんな感情を抱いてるかくらいわかるだろ?明確にわかるはずはないけどな、いや、むしろ‥わからなくていいんだ。俺が今、どんな思いでいるかなんてさ。


「‥結婚、」

たった今紡がれた言葉を頭の中に反芻する。その言葉は頭の中だけではなく俺の口からもこぼれ落ちた。

「そう。来年の春に、」

頬を染めて左手の薬指に嵌められた銀色の指輪を見る。ああ、綺麗だなあ‥良く似合ってるよ。本当に、良く似合ってる。

その銀色の指輪が、君の照れ臭そうに笑う顔をさらに引き立たせてる。

俺の、大好きな顔なんだ。

「‥そっか、‥‥やっとかよ!お前らいつまでもウジウジしてるから見てるこっちはいっつもイライラしてたんだよ!」


ジクジク


照れ臭そうに笑って、左手の薬指に光る銀色の指輪を俺に見せる君の笑顔とは対象に、俺は先程から心臓が痛くて痛くて堪らなかった。まるで心臓が膿んで腫れ上がったみたいだ。

「うん、これもミツオ君のおかげだよ。だから、結婚の報告を一番最初にするのもいつも私たちを応援してくれてたミツオ君にしたんだ。」

「そうなのか、どうせならフランクフルトの一本でも持って来いよな」

「どうせ落として捨てるくせになに言ってんのよ。」

「一口は食うよ、失礼だな」

何気ない会話をしながらでも、俺の心臓はまるで今にも破れてしまいそうなくらい痛かった。

「でね、そんなミツオ君に私たちからお願いがあるの。」

「ん?」

「いつも私たちを応援してくれてたミツオ君にね‥」


ジクジク


「結婚式の友人代表のスピーチをして欲しいの。」


ジクジク


「友人代表のスピーチを、俺に?」

「うん。私も、彼も‥是非ともこれはミツオ君にお願いしたいって一致したんだ。」


ジクジク


「‥おう!任せとけ!俺がお前らの結婚式を最高に盛り上げてやるよ」

「うん!でも、空回って場をシラケさせるのだけは御免ね?」

「余計な心配すんな!お前は‥花嫁なんだから、自分の心配だけしてろって。マリッジなんちゃらにならないように」

「マリッジブルーね。来たらまたミツオ君にヘルプするから平気!」

「うっせ、もう来んな。‥お、お迎えが来たぞ。早く行ってやれよ」

「うん。今日はありがとう。ミツオ君のおかげで、私‥すっごく幸せだよ!これからも友達でいてね!じゃあね!」


そういって君は俺の好きな笑顔で、俺にとって残酷な言葉を告げて‥あいつの元に向かった。やっぱり擬音は便利だ。こんな単語だけで自分の感情を簡単に表現出来るのだから。走り去るその小さな背中に俺は小さな声で言った。


シクシク


じゃあな、





久しぶりの更新が悲恋って‥

(10/29)

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