俺たちの夏が始まる





「始まるんだよ‥!」

「‥なにが?」

あーあ‥また、始まったよ。隣にいるおバカな男子高校生の九分九厘どうでもいい話が、

「俺たちの夏がな!」

「‥‥っていうかさ、この作品‥そもそも夏から始まってんじゃ‥、」

「皆まで言うな。」

私の言葉を妙なポーズで遮る男子高校生をとりあえず哀れみの目で見るが、男子高校生は自分のワールドに浸っているため、私の視線に気付いていない。人生を得する人物はこういうタイプなのだろう、きっと。

「夏がなんなのよ‥ただ、暑苦しいだけじゃない。なんのメリットがあるっていうの?」

「やれやれ‥わかってないな」

「‥‥‥‥‥‥」

「夏っていったらなんだ、言ってみろ」

「‥‥暑い、蚊、冷房」

「お前ほんとに女子高生かよ!夢がない女だな!夢がないから胸も‥」

「胸も?」

「‥すいませんでした。」

私の禁止キーワードを言おうとした男子高校生を前にファイティングポーズをとる。決めポーズをする男子高校生とファイティングポーズをする私は端から見たら明らかに異様な光景だろう。

「ま、待て!夏っつったら祭や花火や海や水着や浴衣といった最高のイベントが盛り沢山な季節だろう!俺はそれを言いたかったんだよ!」

「ああ‥そういうこと、」

「だから拳をおろせ!」

「ひとりで盛り上がってんのはいいけどさぁ‥そんなイベントがたくさんあったって‥あんた彼女いないんだから全部意味ないじゃん。」

「ぐふっ!‥こ、この女‥人が気にしていることを‥!」

「結局、あんたはこの夏も海にナンパしに行くけど誰も捕まらなくてひと夏のアバンチュールすら体験出来ない童貞のままよ。ていうかもう魔法使いになれば?三十歳を過ぎても汚れてなかったらその人物は魔法使いになれるのよ。あんたにピッタリの職業ね」

「人を童貞扱いするなああ!」

「だって、童貞じゃん。」

「確かに童貞だけどさ!傷付くの!悲しいの!さっきから視界が滲んでお前の顔良く見えないの!」

「風俗行けばすぐ脱童貞出来るよ」

「いやじゃあああ!!」

「なんで?」

「え、な、なんでって、そりゃあ‥は‥初めては‥好きな女子とがいいだろ‥、」

頬をポリポリとかきながら(しかも頬を赤く染めて)言う男子高校生に全力で微妙な顔をしてやった。きっと、他の子の前では見せられない顔だろう。

「なにその顔、ブス。なんか‥あれだな、今のお前の顔‥ポケ○ンにいたモンスターに似てる、なんだっけ‥?る、ルージュ‥」

「‥ルージュラ?」

「そう!」

「いっぺん殴っていい?ちょ、マジ一回でいいから。因みにルージュラがわからない人はググろう。金髪で肌真っ暗で一部マニアにしかウケなさそうな容姿のモンスターが映し出されるよ。」

「あだだ!あ、すんませ‥マジすんません!謝る!謝るから髪引っ張んな!髪が後退する!」

全力でヨシタケのオールバックにした髪をさらにバックさせる。というか、ヨシタケでも初めては好きな子と!なんて思うのか。なんだか気持ち悪いな。

「余計なお世話だ!って、だからいい加減髪から手放せ抜ける‥っ!」

「女子か、お前さんは。」

「ほっとけ!お前だって初めては好きな奴とがいいだろ?」

「まあね」

「ぷっ」

「ハゲろ。」

「あだだだ!!さーせん!ほんっとさーせん!」

とりあえず悔しいので手元にあるヨシタケの髪を毟りながら私は今年こそ、脱処女を目指して頑張ろうと心に誓った。今年こそ、このどうしようもなくおバカな男子高校生を落として大人の階段を昇ってやる‥なんて決意をさらに固めて、

「んで、どう?私とか。」

「全力でお断りさせて頂きます。」





男日企画サイト 男子高校生じゃなくても一緒にいていいじゃない!様に提出させていただきました!

おバカな話で申し訳ない‥

(5/24)

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