「ねえ、思ったんだけどさ‥ドイツ語ってかっこよくない?」
私は窓の外を見ながら言った。すると横で戦っているヤナギンと生島、我関せずと本を読む羽原が私を見た
「急になに言ってんのよ‥」
「そうよ、なに言ってんの。愛‥時代はフランス語よ」
「そういう話じゃないけど!」
「羽原の言う通りだ、愛と生島にはまだ見えてない‥最もカッコイイのはイタリア語だということにね」
「私からすれば何処も同じだよ!」
「なに言ってんのよ!ドイツ語が一番カッコイイ!挨拶がグーテンタークだよ、グーテンターク!挨拶めっさオシャレ!」
「そんなこと言ったらボンジュールだってオシャレだし!」
「ボンジョルノのがカッコイイ!」
「どうでもいいわよ‥」
呆れ果てる羽原を尻目に私たちはロクに使えもしないドイツ語やフランス語やイタリア語のカッコイイところを次々と言っておく。もう一度言っておくが、別に私たちは各々がカッコイイと思っている国の言葉を使える訳でもなんでもない。
「ドイツ語が一番高貴じゃん!」
「フランス語が一番オシャレ!」
「イタリア語が一番カッコイイ!」
「生島とヤナギンはドイツ語の良さをわかってないからそんなことが言えるんだよ!トロイメライとかドイツ語なんだよ!それに、みんなだいすきバウムクーヘンは元々、ドイツのお菓子なんだよ!」
「はあ!?お菓子ならフランスが最高峰でしょう!?マカロンとかフランスだし!」
「イタリアのティラミスも忘れんなあああ!!」
「私は和菓子も好きだけど‥」
ヒートアップする私たち三人はとりあえず知っている言葉を連呼し始める。
「グーテンターク!トロイメライ!バウムクーヘンフランクフルト!」
「マカロン、マカロン!」
「パスタボーノ!ボンジョルノ!」
「日本語でいいじゃん‥」
「うるせえ、アークデーモン!」
「そうだそうだ!すっ込んでろアークデーモン!」
「お前はどう考えてもヘブライ語だろ!!」
崩れ落ちる羽原を無視し、ぎゃあぎゃあと地団駄踏みながら騒ぐ私たち
「つか、思ったんだけどこんな外国語使える私たちマジバイリンガルじゃね?」
「確かに!やべえ、パネェ!」
私と生島がそういった瞬間、襖が開いた。
「い、いらっしゃい‥」
襖を開けたのは羽原の兄だった。口元を引き攣らせながら笑っている
「‥‥‥‥‥‥」
あれ程、騒がしかった室内が今は静寂に包まれている。私たち三人はゆっくりと踵を返し、
「アディオスアミーゴ!!」
そう叫んで窓ガラスをぶち破って外に出たあの夏を私は忘れない―‥
バイリンガール 別にはしゃいだっていいじゃない、女子高生だもの。
長編で女子高生たちとの絡みがあまり書けなかったので改めて短編で書きました。アンケの女子高生との異常な日常です。が、ただの馬鹿騒ぎにしかならなかったさーせん!
でも外国語に憧れる時もありますよね!
羽原ちゃんのヘブライ語は‥ ヘブライ語=悪魔の儀式的イメージ 悪魔=アークデーモン
い、色々とごめんなさい‥
(4/24)
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