(!)成人して同棲設定。
夕暮れに染まる河原を私は少し早足で歩いていた。両手には食材が入った袋を抱えて
「早く帰って夕飯の準備しなきゃ」
私の中にあるのはそのことだけ。 きっと、既に家に帰って来ている彼はお腹を空かせて私の帰りを待っているだろう。そう考えると自然と歩調が早くなる。
今日は彼の好きなおかずにしてあげよう。彼はきっと満面の笑みでご飯を平らげる、そんなことを考えると私の頬は自然と緩む。
その時、小さな鳴き声が聞こえた。私はつい足を止めてしまう。
「わ‥ネコだ。」
草むらから出てきたのは茶色の毛並みの可愛らしい猫。猫は私を真っ直ぐに見ていて逃げる気配は無い。
「お腹空いたの?」
私は猫に近寄り、しゃがみ‥そして話し掛けた。だが猫は私を見るだけで返事はしない。
「あ、早く帰らなきゃ‥」
私は家で私を待ち侘びているであろう彼を思い出して立ち上がる。そして猫に別れを告げて、歩き出そうとした。でも、いつの間に来たのやら、足元には茶色の毛並みの猫。じっと私を見上げている。
「‥‥‥‥困ったなあ、私、自分たちの生活で手一杯だから‥君は飼えないんだ。」
言葉が通じているのかいないのかわからないが、猫は私の足元から離れようとしない。
そのまま振り切って帰るのは容易だけれど、私を見る焦げ茶色の瞳や、ふわふわの茶色の柔らかそうな毛が彼を彷彿させて、後ろ髪を引かれるのだ。
「もう、まるで彼みたいね。」
「にゃあ」
「君も彼も、私を困らせるのがとっても得意なのね。‥そんなとこもそっくりで、困っちゃう」
しゃがんで足元にいる猫を撫でようとすると、私のポケットの中にある携帯が鳴った。その音楽は彼専用の着信音で、私はすぐに携帯を取る
「もしもし?」
『愛、今どこ?‥って、いた』
電話口から聞こえた声と少し先から聞こえた声が重なって聞こえた。いや、正確に言うと電話口の方が少し遅かったけど、彼の声が確かに聞こえた。
「‥‥ミツオ君、」
前を見ると耳から携帯を放して私の元に来るミツオがいた。
「遅いから心配しただろ、」
「わざわざ探しに来てくれたの?」
「ま、まあ‥腹も減ってたし‥」
「そっか。ごめんね」
「ネコ?」
「うん、可愛くて‥つい、」
「‥‥‥‥‥」
ミツオ君は私の足元にいるネコを見付けると抱き寄せた。
「こら、愛に擦り寄っていいのは俺だけなんだよ。俺に譲れ」
「なにバカなこと言ってんの」
「愛は俺で手一杯なんだ。」
「その通りだけど‥ネコ相手になにムキになってんのよ」
「だから、ぜーったい、お前に愛はやらないぞ。いいな?」
ミツオ君の言葉に猫は鳴いた。ミツオ君が猫を下ろしてやると私を見てその場から去った。
「あーあ、かわいかったのに」
名残惜しそうに私が呟くと、ミツオ君は途端に膨れっ面になって不機嫌そうに言う。
「愛には俺がいるだろ。」
「はいはい、私はミツオ君で手一杯よ。ごめんね、帰りが遅くて。帰ったらすぐご飯作るから」
私が背伸びをしてミツオ君の頭を撫でるとミツオ君は嬉しそうに笑って私の手からビニール袋を引ったくった。
「よーし、なら早く帰ろうぜ!」
「あ、ちょっと!もう‥!待ってよミツオ君!」
A brown selfish cat 私はあなたという猫で手一杯よ!
アンケートにあったミツオ君甘夢です。捏造すいません!
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