ありふれた日常の中の




「俺らは近すぎる!!」

空が夕暮れに染まり始めた頃、ヨシタケがベッドから立ち上がって拳を作り、力強く言い放った

「‥‥‥なにが?」

「俺は気付いたんだよ。」

「なにに?」

「カップルのマンネリの打開策を」

「私たち、マンネリしてたの?」

「俺らは近すぎたんだ、愛」

「はあ、‥で?」

私は机に置かれたお茶を飲みながら続きを催促する

「だから」

「うん」

「遠距離恋愛だ!」

「わあ、全然意味わかんない!」

「俺たちは近すぎた。」

「大事な事なので3回言いました」

「つまり、だ。俺たちは家が近所。会おうと思えば1分で会える」

「そうだね」

「こんなに近くにいたらなぁ‥」

「近くにいたら?」

「お互いの大切さを見失っちまうだろうが!」

「ヨシタケだけじゃない?‥と言いたいとこだけど‥なるほど、一理あるね」

「だろ?」

「でも、引越しする予定ないよ」

「俺もだ。」

「ダメじゃん」

「実際に遠距離恋愛なんてするワケねえだろ。シュミレーションだよ、遠距離の」

「どんな風に?」

「例えば‥やり取りはメールや電話か手紙だけだな。」

「会わないの?」

「会ったら遠距離恋愛じゃなくなるだろ」

「それもそっか、会えないんだ〜‥大変だね。遠距離恋愛って」

「完全に人事みたいに言ってるけど俺らもこれからやるんだぞ?」

「じゃあ、期間は?一年くらい?」

「‥え?な、長くね?せめて一週間とか一ヶ月にしようぜ‥?」

「ええ〜‥いいよ。」

それから、ヨシタケの思い付きでカップルマンネリ打開策の遠距離恋愛ごっこが始まった。私たちはなるべく会わないようにし、やり取りはメールや電話だけになった。



「‥もう1週間かぁ、」

私は携帯を見ながら呟く。先程から何回もメールの問い合わせをしている、以前はそんなことしていなかったのに

「‥‥ヨシタケにしては、中々いいこと思い付いたわね」

放課後は毎日のようにヨシタケの家に遊びに行っていた。それがパタリと止んだから‥私は放課後の過ごし方で悩んだ。

遠距離恋愛ごっこを始めてから携帯を手放さなくなった。家にいる時はもちろん、友達と遊んでる時も携帯を片時も放さなかった。‥いつ、ヨシタケから連絡が来るかわからないから。

「まだかな‥電気は着いてるのに」

カーテンの隙間からヨシタケの部屋の明かりがついていることを確認する。これも遠距離恋愛ごっこを始めてからするようになった

「ていうか、会いたいな‥」

私がそう呟いた時、携帯のメールの着信音が鳴った。画面に表示されたのはヨシタケの名前、私は慌てて携帯を開く。


――会いたい。


メールを見ると、たった一言だけ。私が返事を打とうとすると再び、着信音が鳴り響く。

だが、今度はメールではなく電話で私は名前を確認することもなくすぐに電話に出た

「もしもし、ヨシタケ?」

『お‥1コールで出るとか早いな』

「ヨシタケ、私‥」

『愛、俺から言い出したくせにこういうのは情けねえってわかってるけどさ‥もう限界、会いてえよ。』

「私も‥会いたいよ、ヨシタケ」

『外で待ってる』

それを聞いた私はすぐに立ち上がって家の外に出た。

「ヨシタケ‥!」

「悪いな、夜なのに」

家の前にはヨシタケが携帯を持って立っている。私はそのままヨシタケに飛び付くように抱き着いた

「うおっ、びっくりした‥」

「会いたかったよ‥」

「おう‥俺も、」

「‥結構、効いた。遠距離恋愛」

久しぶりのヨシタケに、ホッとする
たった一週間しか離れていないのに何年も離れていたかのような錯覚に陥った

「あ〜‥久しぶりの愛だ、」

「今回で、私にとってどれだけヨシタケが大切か、わかった」

「俺も。普段はあんま持ち歩かねえのにおかげで携帯依存症になった」

「あ、それ私も。」

「なんか一々、愛の部屋の電気とか確認するようになったし。」

「私も気になって見てた」

お互い離れてた時の行動が同じで、私たちは笑い合った。

「行動パターン同じじゃねえか。」

「たまにはいいね、またやる?」

「勘弁、もうやりたくねえ。一々、メールの問い合わせすんの疲れんだよ。しかも無い時はめちゃくちゃがっかりするし」

「なにそれ。私もしてたし」

ヨシタケは私と同じ気持ちでいた。そして離れている間は同じ行動をしていた。それがなんだかおかしいような、嬉しいような気がして、ヨシタケの腕の中で私はまた笑った。



ありふれた日常の中の
キミの大切さが身に染みた





久しぶりのヨシタケ夢です
甘めにしたかったらこんなの出来た

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